難病Update

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2022.01.27

人工膝関節全置換手術後の疼痛に対するデキサメタゾンの鎮痛補助薬としての効能評価:無作為化臨床試験

Effect of dexamethasone as an analgesic adjuvant to multimodal pain treatment after total knee arthroplasty: randomised clinical trial

Kasper Smidt Gasbjerg*, Daniel Hägi-Pedersen, Troels Haxholdt Lunn, Christina Cleveland Laursen, Majken Holmqvist, Louise Ørts Vinstrup, Mette Ammitzboell, Karina Jakobsen*, Mette Skov Jensen*, Marie Jøhnk Pallesen, Jens Bagger, Peter Lindholm, Niels Anker Pedersen, Henrik Morville Schrøder, Martin Lindberg-Larsen, Anders Kehlet Nørskov, Kasper Højgaard Thybo, Stig Brorson, Søren Overgaard, Janus Christian Jakobsen, Ole Mathiesen

*Department of Anaesthesiology, Næstved, Slagelse and Ringsted Hospitals, Næstved, Denmark.

BMJ. 2022 Jan 4;376:e067325. doi: 10.1136/bmj-2021-067325.

人工膝関節全置換術は世界的に普及してきているが、術後の痛みに対してマルチモーダル鎮痛治療が使われている。デキサメタゾンは、これまで術後の吐気と補助鎮痛効果を期待して投与されてきたが、エビデンスがまだ乏しい。そのために術後患者にデキサメタゾンを使った臨床評価を行うためにデンマークの5病院で20189月から20203月に人工膝関節全置換術を受けた成人患者485例を対象に、無作為化試験により効果を評価した。

患者を層別化し、コンピュータを使って、無作為に、(1)DX1群(デキサメタゾン24 mg+プラセボ)、(2)DX2群(デキサメタゾン24 mg+デキサメタゾン24 mg)、(3)プラセボ群(プラセボ+プラセボ)の3群に、術前 - 24時間の間に割り付けを行った。割り付けについては患者と医師及び評価者もわからない盲検法で行った。その他に、全患者に局所浸潤鎮痛薬のパラセタモール、イブプロフェンを投与した。痛みの効果の評価は、術後0 - 48時間の間のモルヒネの静脈投与量とした。モルヒネの量は10 mg刻みで有意差はP<0.017で評価した。副次的な評価指標として術後の疼痛の訴えなどを参考とした。

患者485例を無作為に、(1)DX1群161例、(2)DX2群162例、(3)プラセボ群162例の3群に割り付けた。分析対象患者は472例(97.3%)であった。0 - 48時間の間の各群のモルヒネ消費量の中央値は、(1)DX1群37.9 mg(20.7 - 56.7)、(2)DX2群35.0 mg(20.6 - 52.0)、(3)プラセボ群43.0 mg(28.7 - 64.0)であった。DX1群とDX2群との間は−2.7 mg(P=0.30)、DX1群とプラセボ群との間は7.8 mg(P=0.008)、DX2群とプラセボ群との間は10.7 mg(P<0.001)の差が認められた。術後の疼痛は、デキサメタゾン投与1回では24時間時点で軽減していた。投与2回による48時間時点でも軽減していた。つまり、デキサメタゾンを2回投与することにより、人工膝関節全置換術後48時間中のモルヒネ消費量の減少となり、術後疼痛を軽減させた。

URL
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34983775/

コメント

人工膝関節全置換術後の中等度以上の疼痛を訴える患者に鎮痛剤が使われている。デキサメタゾンはその術後の痛みの補助治療薬として、また抗炎症作用による鎮痛効果を期待して、使用されてきた。しかし、使用する根拠が示されていなかった。そのために対照群を置いた無作為化盲検法を行い、疼痛に対する効能を評価したのが本研究であった。本研究では、デキサメサゾン24 mgを2回の静脈投与することで、患者の痛みは抑えられ、モルヒネの消費量を有意に減らすことができることが示された。デキサメサゾンを人工膝関節全置換術後の疼痛治療補助薬として使用してきたことは意味のないことではなかったことを示している。

監訳・コメント:関西大学 社会安全学研究科 公衆衛生学 高鳥毛 敏雄先生

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