2022.02.25
インターロイキン-6の阻害が血液脳関門障害を抑制して視神経脊髄炎スペクトラム障害の発症を予防することが新たな血液脳関門モデルで明らかに
New BBB Model Reveals That IL-6 Blockade Suppressed the BBB Disorder, Preventing Onset of NMOSD
Yukio Takeshita*, Susumu Fujikawa*, Kenichi Serizawa*, Miwako Fujisawa*, Kinya Matsuo*, Joe Nemoto*, Fumitaka Shimizu*, Yasuteru Sano*, Haruna Tomizawa-Shinohara*, Shota Miyake*, Richard M Ransohoff*, Takashi Kanda
*From the Department of Neurology and Clinical Neuroscience (Y.T., S.F., M.F., K.M., J.N., F.S., Y.S., T.K.), Yamaguchi University Graduate School of Medicine; Kenichi Serizawa (K.S., H.T.-S., S.M.), Haruna Tomizawa-Shinohara and Shota Miyake, Product Research Department, Chugai Pharmaceutical Co., Ltd, Kanagawa, Japan; and Richard M Ransohoff (R.M.R.), Third Rock Ventures, Boston, MA.
Neurol Neuroimmunol Neuroinflamm. 2021 Oct 19;8(6):e1076. doi: 10.1212/NXI.0000000000001076. Print 2021 Nov.
視神経脊髄炎スペクトラム障害(neuromyelitis optica spectrum disorder:NMOSD)の病態生理ならびにインターロイキン-6阻害薬(サトラリズマブ)の治療メカニズムと濃度を、特に血液脳関門(blood-brain barrier:BBB)の破綻という観点から、新たなin vitroおよびex vivoヒトBBBモデルならびにin vivoモデルを用いて評価する。BBBにおけるバリア機能の持続、白血球の血管外遊出、ならびに視神経脊髄炎免疫グロブリンG(neuromyelitis optica-immunoglobulin G:NMO-IgG)とサトラリズマブの脳内移行性を評価するための新たな静的in vitroモデルとフローベースex vivoモデルを、新たに確立されたトリプル共培養システムを用いて構築した。
In vitroおよびex vivoの実験では、NMO-IgGがサトラリズマブとNMO-IgGの脳内移行性を亢進すること、サトラリズマブがNMO-IgGによって誘発されるT細胞の血管外遊出およびバリア機能を抑制することが示された。NMO-IgGの存在下でBBBを通過できるサトラリズマブは、BBBの機能不全および炎症細胞の浸潤を抑制し、これがNMOSDの発症予防につながる。
URL
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34667128/
コメント
中枢神経は中毒や無酸素には弱いが、BBBにより抵抗性もある。BBBは脳微小血管内皮細胞、ペリサイト、アストロサイトの3種類の細胞と2枚の基底膜から構成されており、その破綻は、様々な疾患を引き起こすと言われている。今回の報告は、著者らが新たに開発したin vitroおよびex vivoヒトBBBモデルにて、NMOSDの発症機序を検討したものであり、NMO-IgGの存在下でBBBを通過できるサトラリズマブは、BBBの機能不全および炎症細胞の浸潤を抑制し、NMOSDの発症予防につながることなどを指摘した。本報告と直接的な関連はないが、ex vivo BBBモデルの構築は、BBBでblockされる薬剤、たとえば、パーキンソン病におけるLドパの脳内通過効率の上昇因子の検討や新薬開発などにも応用可能である。生体防御にとって重要なBBBに関する論文で興味があり取り上げた。
監訳・コメント:国立病院機構 大阪南医療センター 神経内科 狭間 敬憲先生