難病Update

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STAMP阻害薬アシミニブチロシンキナーゼ阻害薬慢性骨髄性白血病(CML)

2022.02.25

2剤以上のチロシンキナーゼ阻害薬の投与歴のある慢性骨髄性白血病患者におけるSTAMP阻害薬アシミニブとボスチニブを比較する第3相非盲検無作為化試験

A phase 3, open-label, randomized study of asciminib, a STAMP inhibitor, vs bosutinib in CML after 2 or more prior TKIs

Delphine Réa*, Michael J Mauro, Carla Boquimpani, Yosuke Minami, Elza Lomaia, Sergey Voloshin, Anna Turkina, Dong-Wook Kim, Jane F Apperley, Andre Abdo, Laura Maria Fogliatto, Dennis Dong Hwan Kim, Philipp le Coutre, Susanne Saussele, Mario Annunziata, Timothy P Hughes, Naeem Chaudhri, Koji Sasaki, Lynette Chee, Valentin García-Gutiérrez, Jorge E Cortes, Paola Aimone, Alex Allepuz, Sara Quenet, Véronique Bédoucha, Andreas Hochhaus

*DMU Hématologie, Hépital Saint-Louis, Paris, France.

Blood. 2021 Nov 25;138(21):2031-2041. doi: 10.1182/blood.2020009984.

2剤以上のチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)に抵抗性あるいは不耐容の慢性期の慢性骨髄性白血病(CML-CP)患者は、疾患の生物学的特性のために、そして、現治療の有効性および安全性が不十分であるために転帰不良となるリスクが高い。ABLミリストイルポケットを特異的標的(Specifically Targeting the ABL Myristoyl Pocket; STAMP)とする、画期的新薬であるBCR-ABL1阻害薬アシミニブは、既承認のTKIに対する抵抗性および不耐容の克服に結び付く可能性がある。この第3相非盲検試験では、2剤以上のTKIによる治療歴のあるCML-CP患者が、アシミニブ40 mgの1日2回投与群、または、ボスチニブ500 mgの1日1回投与群に、2:1の比率で無作為に割り付けられた。無作為化に際しては、ベースラインでの細胞遺伝学的大奏効(MCyR)の状態に従って患者を層別化した。試験の主要目的は、24週時点での分子遺伝学的大奏効(MMR)率をアシミニブとボスチニブで比較することであった。233人の患者が、アシミニブ群157人とボスチニブ群76人に割り付けられた。追跡調査期間の中央値は14.9カ月であった。24週時点でのMMR率は、アシミニブ群では25.5%、ボスチニブ群では13.2%であり、ベースラインでのMCyRで補正したMMR率の群間差は12.2%(95%信頼区間2.19 - 22.30%、両側検定P=0.029)であった。グレード3以上の有害事象、および治験薬の投与中止に至った有害事象の発現割合は、アシミニブの方がボスチニブより低かった(それぞれ、50.6%対60.5%、5.8%対21.1%)。この試験により、アシミニブはボスチニブより有効性が高いこと、そして、安全性に関しても良好であることが示された。これらの結果は、2剤以上のTKIに抵抗性または不耐容のCML-CP患者に対して新規治療としてアシミニブを使用することを支持するものである(www.clinicaltrials.govにおける登録番号:NCT03106779)。


URL
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34407542/

コメント
急性骨髄性白血病や急性リンパ性白血病などの急性白血病は、適切な治療なしでは急激に病状が悪化し患者を生命の危険にさらす。一方、本論文の主題である慢性骨髄性白血病(CML)は、発症後の急激な病状の進行はみとめられないが、年単位で病状は進行し、ついには急性転化を生じ患者を死に至らしめるものである。以前は、著増した白血球数のコントロール(白血球数を減少させる)などに有効な薬剤はあったが、白血病細胞の増殖をその増殖メカニズムに基づいて根本的に抑制する本質的な治療薬はなく、造血幹細胞移植が唯一の根治的治療法であった。つまり、長期生存・治癒を求めるためには、造血幹細胞移植に伴う治療関連死のリスクが存在し、また、患者が高齢であればそのリスクがさらに高くなることが予想される。

チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)であるイマチニブはCML細胞のシグナル伝達を阻害し細胞増殖を抑制するものであり、そのイマチニブの出現がCML治療に革命的進歩をもたらした。それまで造血幹細胞移植なしでは長期生存が期待できなかったCML患者の多くが、そのTKIの継続的な内服治療により治癒といってもいいほどの長期生存が期待できるようになった。さらに、今では、イマチニブの出現以後何種類かのTKIが実臨床で使用可能となっており、CMLの治療は非常な進歩を遂げた。実際、長期のTKI内服治療後にその治療を中止しても再発のみられない患者が多くみられ、それらの患者はおそらく治癒に導かれたと考えられる。

しかしながら、逆に、複数のTKIに対しても反応が乏しい(抵抗性)、あるいは、副作用のためにTKIの投与が継続できない(不耐容)CML患者も少なからず存在する。本論文で紹介されているアシミニブは、従来のTKIとは別の作用機序を有するTKIであり、既存のTKIに抵抗性あるいは不耐容のCML患者に新たな治療選択肢を与えるものであると思われる。

監訳・コメント:大阪大学大学院 医学系研究科 癌幹細胞制御学寄附講座 寄附講座教授 岡 芳弘先生

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