2022.02.25
新生血管による加齢黄斑変性に対する16週間隔のファリシマブの硝子体内投与の有効性、持続性、安全性(TENAYA、LUCERNE):2つの無作為・二重盲検・非劣性・第3相治験結果
Efficacy, durability, and safety of intravitreal faricimab up to every 16 weeks for neovascular age-related macular degeneration (TENAYA and LUCERNE): two randomised, double-masked, phase 3, non-inferiority trials
Jeffrey S Heier*, Arshad M Khanani, Carlos Quezada Ruiz, Karen Basu, Philip J Ferrone, Christopher Brittain, Marta S Figueroa, Hugh Lin, Frank G Holz, Vaibhavi Patel, Timothy Y Y Lai, David Silverman, Carl Regillo, Balakumar Swaminathan, Francesco Viola, Chui Ming Gemmy Cheung, Tien Y Wong, TENAYA and LUCERNE Investigators
*Ophthalmic Consultants of Boston, Boston, MA, USA. Electronic address: JSHEIER@eyeboston.com.
Lancet. 2022 Feb 19;399(10326):729-740. doi: 10.1016/S0140-6736(22)00010-1. Epub 2022 Jan 24.
世界271施設の50歳以上の未治療の新生血管を伴う「加齢黄斑変性」の患者に対するファリシマブ(faricimab)の16週間隔投与とアフリベルセプト(aflibercept)の8週間隔投与との比較有効性の第3相治験成績の評価を行った。「ファリシマブ6.0 mg」を最長16週間隔で投与する群と、「アフリベルセプト2.0 mg」を8週間隔で投与する群に層別し盲検法により1:1の割合で無作為に割り付けて、投与患者の20週、24週時点の疾患活動性を評価した。主要評価項目は40、44、48週における最高矯正視力(BCVA)の平均変化量とした。具体的には、1,329例の患者をTENAYA治験(ファリシマブ投与群334例、アフリベルセプト投与群337例、2019年2月19日 - 11月19日)およびLUCERNE治験(ファリシマブ投与群331例、アフリベルセプト投与群327例、2019年3月11日 - 11月1日)の2つの治験グループに無作為に割り付けて薬効の比較評価を行った。TENAYAとLUCERNEの治験グループの最高矯正視力の変化量は、ファリシマブ投与群の方がアフリベルセプト投与群に対し非劣性であった。TENAYAでは調整済み平均変化量5.8文字(95%CI:4.6 - 7.1)および5.1文字(3.9 - 6.4)、その差は0.7文字(−1.1 - 2.5)であった。LUCERNEでは6.6文字(5.3 - 7.8)および6.6文字(5.3 - 7.8)、その差0.0文字(–1.7 - 1.8)であった。ファリシマブとアフリベルセプトとの投与群間の眼の有害事象の発生率は、TENAYA治験では121例(36.3%)に対して128例(38.1%)、LUCERNE治験では133例(40.2%)に対して118例(36.2%)でいずれも同等程度であった。ファリシマブの最長16週間隔投与でも視力回復の有効性についてはアフリベルセプトの8週間投与と比べて違いはなく、ファリシマブを使用することにより患者の治療負担を軽減できる可能性が示唆された。
URL
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35085502/
コメント
ファリシマブは、アンジオポエチン-2(Ang-2)と血管内皮増殖因子-A(VEGF-A)を中和する眼科領域における初めてのバイスペシフィック抗体薬である。加齢黄斑変性には網膜下に新しい血管ができることで生じるものがある。この加齢黄斑変性に対しファリシマブは従来薬のアフリベルセプトよりも長い間隔で投与しても有効性に違いがないことを示すものであった。ファリシマブは最長16週の投与間隔で効果があることが示され、日本でも2021年6月に承認申請がすでになされている。加齢黄斑変性は60歳以上における視力喪失の主な原因となっているとされているため、承認されると多くの加齢黄斑変性患者の通院や治療の負担軽減につながると期待される。
監訳・コメント:関西大学 社会安全学研究科 公衆衛生学 高鳥毛 敏雄