難病Update

難病Update

AAVANCAESKDplasma exchange

2022.03.29

抗好中球細胞質抗体関連血管炎(AAV)患者に対する血漿交換の治療効果の評価:最新のシステマティックレビューとメタアナリシス

The effects of plasma exchange in patients with ANCA- associated vasculitis: an updated systematic review and meta- analysis

Michael Walsh*, David Collister, Linan Zeng, Peter A Merkel, Charles D Pusey, Gordon Guyatt, Chen Au Peh, Wladimir Szpirt, Toshiko Ito-Hara, David R W Jayne, Plasma exchange and glucocorticoid dosing for patients with ANCA-associated vasculitis BMJ Rapid Recommendations Group

*Department of Medicine, McMaster University, Hamilton, Canada lastwalsh1975@gmail.com.

BMJ . 2022 Feb 25;376:e064604. doi: 10.1136/bmj-2021-064604.

抗好中球細胞質抗体関連血管炎(ANCA associated vasculitis、以下、AAV)に対する血漿交換の治療効果を無作為化比較試験による研究を集め、システマティックレビュー及びメタアナリシスにより評価した。研究の選択基準は、12か月以上の追跡期間で、対象疾患はAAV又は微量免疫型急速進行性糸球体腎炎である。研究論文はMedline、Embase、CENTRALから2020年7月までに検索で抽出した。バイアスはCochraneバイアスリスクツールを用いて処理した。治療効果の評価は、追跡調査期間が12か月時点の全死因死亡、末期腎不全(ESKD)、重篤感染症、疾病再発、重篤有害事象、QOL(生活の質)で行った。

9つの研究の1,060例が適格基準に合致した。それをもとに全死因死亡、ESKDや重篤感染症の発生リスクを評価した。血漿交換は、全死因死亡の相対リスクが0.90(95%CI:0.64 - 1.27)であり、ほとんど影響を及ぼしていなかった。ESKDについては、7つの研究の999例のデータを使った分析では12か月時点の相対リスクは0.62(0.39 - 0.98)であり、リスク低下が認められた。重篤感染症については、4つの研究の908例のデータの12か月時点のリスクでみると相対リスクは1.27(1.08 -1.49)であり、上昇が認められた。その他の転帰については、影響の評価は不確定であるが重要なものはなかった。

URL
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35217545/

コメント
抗好中球細胞質抗体関連血管炎(AAV)の治療には、重症度や年齢などに応じて、ステロイドや免疫抑制剤の併用がなされている。1980年代から血漿交換も一部の患者に行われているが、小規模な臨床研究報告を根拠としたものしかまだない。そこで、ランダム化比較試験による9つの研究のメタアナリシスを行い、転帰に及ぼす影響を検討した。本研究の結果からは、死亡リスクへの影響は変化がないこと、腎機能に関係なく1年後の末期腎疾患リスクを低下させていたこと、他方で重篤な感染症のリスクを高めていたことが示されている。しかし、観察されたイベントが少なく、その効果の断定的な結論には至っていない。AAVの病態は次第に解明されてきているが、根本的治療方法の確立への道のりはまだ遠そうである。

監訳・コメント:関西大学 社会安全学研究科 公衆衛生学 高鳥毛 敏雄先生

一覧へ