難病Update

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パーキンソン病ラッソ回帰小脳性運動失調症衝動性制御障害非運動兆候

2022.05.30

小脳性運動失調症患者とパーキンソン病患者における衝動性特性プロファイル

Impulsivity Trait Profiles in Patients With Cerebellar Ataxia and Parkinson Disease

Tiffany X Chen*, Chi-Ying Roy Lin, Megan A Aumann, Yan Yan, Nadia Amokrane*, Natasha A Desai*, Hakmook Kang, Daniel O Claassen, Sheng-Han Kuo*

*Department of Neurology, Columbia University Medical Center, New York, NY.

Neurology. 2022 Apr 15;10.1212/WNL.0000000000200349. doi: 10.1212/WNL.0000000000200349. Online ahead of print.

小脳性運動失調症(cerebellar ataxia:CA)とパーキンソン病(Parkinson disease:PD)における衝動性特性プロファイルの違いを検討するため、Barratt衝動性尺度(Barratt impulsivity scale:BIS-11)を用いてCAにおける衝動性特性を評価し、PDと比較した。CA被験者とPD被験者をそれぞれコロンビア大学医療センターとヴァンダービルト大学医療センターの運動障害クリニックで連続的なサンプリングによって登録し、2施設横断研究を行った。すべての被験者が、衝動性特性の指標としてBIS-11質問票に回答した。一般線形モデル、ラッソ回帰を用いて、BIS-11の総スコア、下位尺度スコア、個別項目スコアを群間で比較した。衝動性に対する小脳の関与を小脳外の病態、ドパミン作動性障害、または薬剤によると考えられる影響と分けるため、サブグループ解析を行った。

年齢をマッチさせた対照者90例、CA患者50例、PD患者50例の計190例が評価を完了した。CA患者が回答したBIS-11スコアは対照者よりも9.7%高く(P<0.001)、PD患者のスコアは対照者よりも24.9%高かった(P<0.001)。CA患者では、最も影響があった衝動性ドメインは非計画性であった。それに対しPD患者では、非計画性、注意、運動の全ドメインでより大きな衝動性が認められた。

URL
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35428731/

コメント
PDの非運動兆候は近年よく取り上げられる話題である。一方同じく神経変性疾患と考えられているCAの非運動兆候は、生活の質に与える影響は大きいと言われているが、取り上げられる機会が少ない。今回の論文は、CAの非運動兆候の一つである衝動性制御障害を、PDと比較検討したものである。PDでは主に、薬剤、特にドパミンアゴニストにより生じると考えられているが、本報告では、CAにおいては、PDとは異なり、非計画性の特性によって独自に引き起こされるようである。このことは、著者らが指摘するように、小脳と大脳基底核が衝動的行動を別個に支配しており、小脳がドメイン特異的に脳の衝動性の回路に関与している可能性が示唆される。衝動性制御障害への新たな考え方であり、興味があり取り上げた。

監訳・コメント:国立病院機構 大阪南医療センター 神経内科 狭間 敬憲先生

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