難病Update

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covid-19immune mediated neurological eventsSARS-CoV-2 infectionvaccination

2022.05.30

covid-19ワクチン接種者とSARS-CoV-2感染者における免疫介在性神経学的イベントの発生リスク:地域ベースの対照症例分析

Association between covid-19 vaccination, SARS-CoV-2 infection, and risk of immune mediated neurological events: population based cohort and self-controlled case series analysis

Xintong Li*, Berta Raventós, Elena Roel, Andrea Pistillo, Eugenia Martinez-Hernandez, Antonella Delmestri*, Carlen Reyes, Victoria Strauss*, Daniel Prieto-Alhambra, Edward Burn*, Talita Duarte-Salles

*Centre for Statistics in Medicine, Nuffield Department of Orthopaedics, Rheumatology, and Musculoskeletal Sciences (NDORMS), University of Oxford, Oxford OX3 7LD, UK.

BMJ. 2022 Mar 16;376:e068373. doi: 10.1136/bmj-2021-068373.

新型コロナウイルス感染症(covid-19)ワクチン接種と新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染者において免疫介在性神経学的イベントのリスクが高まるのか明らかではない。そこで、英国とスペインの地域ベースのプライマリケアの記録を用いて検討を行った。対象者は、接種開始から英国では2021年5月9日、スペインでは2021年6月30日までの間の者とした。covid-19ワクチン(ChAdOx1 nCoV-19、BNT162b2、mRNA-1273またはAd.26.COV2.S)を1回以上投与された8,330,497人であった。比較の対象は、2020年9月1日から、SARS-CoV-2の逆転写PCR検査で初めて陽性となったワクチン未接種者735,870人の者と一般人口集団の14,330,080人であった。

転帰は、ベル麻痺、脳脊髄炎、ギラン・バレー症候群および横断性脊髄炎の罹患率である。罹患率は、ワクチンの初回投与後21日間、SARS-CoV-2陽性の検査結果後90日間で推定した。一般人口集団コホートの2017年から2019年の間の自然発生率を計算して、間接標準化罹患比を比較した。補正罹患率比は自己対照症例研究として計算した。分析は、ワクチンとして「ChAdOx1 nCoV-19」投与の4,376,535人、「BNT162b2」投与の3,588,318人、「mRNA-1273」投与の244,913人、「Ad26.CoV.2」投与の120,731人、これらの者とSARS-CoV-2感染者735,870人、ならびに一般人口集団14,330,080人について行った。ワクチン接種者の免疫介在性神経学的イベントの発生率は一般人口集団コホートと変わらなかった。統計的検出力が不十分であるためベル麻痺に絞って実施したが、ワクチン接種者に特に高くなることは認められなかった。しかし、発生率は、SARS-CoV-2の感染者では高かった。英国のデータでは、感染者の標準化罹患比は、ベル麻痺は1.33(1.02 - 1.74)、脳脊髄炎は6.89(3.82 - 12.44)、ギラン・バレー症候群は3.53(1.83 - 6.77)であった。横断性脊髄炎は希少(全ワクチン接種コホートで5件未満)で分析できなかった。

URL
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35296468/

コメント
ワクチン接種は、接種者の免疫に影響を与える。ワクチンの中には、ベル麻痺、脳脊髄炎、ギラン・バレー症候群および横断性脊髄炎などの免疫介在性神経学的イベントのリスクを高めるのではないかとの懸念があった。しかし、本研究はCovid-19ワクチンの接種者における免疫介在性神経学的イベント発生率は一般集団と変わらないと示してくれている。ただし、SARS-CoV-2感染者ではこれらのイベントのリスク上昇が認められている。つまり、感染者を一人でも少なくすることが最も大事であることを改めて示しているものであった。

監訳・コメント:関西大学 社会安全学研究科 公衆衛生学 高鳥毛 敏雄先生

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