難病Update

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CAR T細胞IFNγR経路固形腫瘍細胞接着

2022.05.30

固形腫瘍ではCAR T細胞による癌細胞の傷害にIFNγR経路が必要であるが、白血病はこの経路を必要としない

CAR T cell killing requires the IFNγR pathway in solid but not liquid tumours

Rebecca C Larson*, Michael C Kann*, Stefanie R Bailey*, Nicholas J Haradhvala, Paula Montero Llopis, Amanda A Bouffard*, Irene Scarfó*, Mark B Leick*, Korneel Grauwet*, Trisha R Berger*, Kai Stewart, Praju Vikas Anekal, Max Jan*, Julia Joung, Andrea Schmidts*, Tamara Ouspenskaia, Travis Law, Aviv Regev, Gad Getz, Marcela V Maus

*Cellular Immunotherapy Program, Cancer Center, Massachusetts General Hospital, Boston, MA, USA.

Nature. 2022 Apr;604(7906):563-570. doi: 10.1038/s41586-022-04585-5. Epub 2022 Apr 13.

キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法は一部の白血病の治療に画期的な効果をもたらしたが、固形腫瘍に対するその効果は限定的である。固形腫瘍の細胞は、CAR T細胞による細胞傷害に対し固有の耐性機序を有する可能性がある。この耐性経路をバイアスのかからない方法でシステマティックに同定するため、CAR T細胞の有効性が限定的であることが判明している膠芽腫についてゲノムワイドCRISPRノックアウトスクリーニングを実施した。インターフェロンγ受容体(IFNγR)におけるシグナル伝達経路に関与する遺伝子(IFNGR1、JAK1またはJAK2)が欠失すると、膠芽腫およびその他の固形腫瘍におけるCAR T細胞の傷害作用に対する耐性が増加することがin vitro試験およびin vivo試験で示された。しかし白血病またはリンパ腫の細胞株では、この経路の欠失によるCAR T細胞への感受性の低下は認められなかった。転写プロファイリングにより、IFNγR1が欠失した膠芽腫細胞では、CAR T細胞への曝露後、細胞接着経路の活性化が抑制されることが明らかとなった。膠芽腫細胞では、IFNγR1の欠失によりCAR T細胞の結合持続期間が短縮し結合力が低下することが判明した。CAR T細胞が従来の抗原提示経路を必要としないことを考えると、IFNγRにおけるシグナル伝達がCAR T細胞に対する固形腫瘍の感受性に重要な役割を担っていることは意外である。膠芽腫では、CAR T細胞が十分に接着し細胞傷害をもたらすためにはIFNγRにおけるシグナル伝達が必要であった。本研究により、白血病と固形腫瘍ではCAR T細胞に対する感受性が異なることが明らかとなり、固形腫瘍ではT細胞と腫瘍細胞との結合の強化により治療への反応が改善することが示唆される。

URL
http://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35418687/

コメント
固形癌に対するCAR T細胞療法は現時点では成功していない。癌局所の免疫環境が負に傾いているためとか、適当な癌抗原がないためとか、癌局所へのCAR T細胞の移行の効率等さまざまな原因が言われているが、筆者らは固有癌特有な別の耐性機序があるのではと考え研究を始めている。腫瘍細胞でのインターフェロンγ受容体(IFNγR)を介したシグナル伝達経路がCAR T細胞の効果発現に重要な役割を果たすこと、またそのメカニズムとして腫瘍細胞とCAR T細胞の接着因子を介した接着が関与していることを示した。IFNγRを介した刺激が接着因子を誘導することでCAR T細胞との接着時間を延ばし、結果抗腫瘍効果につながるというのは興味深い知見と思われた。今後腫瘍細胞とCAR T細胞の接着という観点からの治療法発展が期待される。

監訳・コメント:大阪大学大学院医学系研究科 癌ワクチン療法学寄附講座 招へい教授 坪井 昭博先生

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