難病Update

難病Update

AML急性骨髄性白血病経口アザシチジン維持療法

2022.06.29

経口アザシチジンは測定可能残存病変の状態にかかわりなく寛解期の急性骨髄性白血病(AML)患者の生存期間を延長させる

Oral azacitidine prolongs survival of patients with AML in remission independently of measurable residual disease status

Gail J Roboz*, Farhad Ravandi, Andrew H Wei, Hervé Dombret, Felicitas Thol, Maria Teresa Voso, Andre C Schuh, Kimmo Porkka, Ignazia La Torre, Barry Skikne, Jianhua Zhong, C L Beach, Alberto Risueño, Daniel L Menezes, Gert Ossenkoppele, Hartmut Döhner

*Weill Cornell Medicine, New York, NY.

Blood. 2022 Apr 7;139(14):2145-2155. doi: 10.1182/blood.2021013404.

強力な化学療法施行後に寛解期にある急性骨髄性白血病(AML)患者の測定可能残存病変(measurable residual disease:MRD)は、早期再発および予後不良の予測因子である。MRD陰性の状態を延長させる、あるいはMRD陽性の患者のそれを陰性化させる寛解後の維持療法は、再発を遅延または予防し、全生存期間(overall survival:OS)を改善する可能性がある。第3相QUAZAR AML-001試験では、低メチル化剤である経口アザシチジン(経口AZA、旧名称CC-486)は、強力な化学療法後の第一寛解期にあって造血幹細胞移植の候補にならない55歳以上のAML患者のOSおよび無再発生存期間(relapse-free survival:RFS)をプラセボと比較して有意に延長させた。この試験では、マルチパラメーターフローサイトメトリー法を用いて、ベースラインおよび3サイクルごと(最初のサイクルの1日目)に採取した骨髄検体のMRD(骨髄中白血病細胞が0.1%以上)を評価した。その結果、予想通り、ベースラインのMRDは、OSおよびRFSとの間に、有意な関連が認められた。多変量解析では、経口AZAは、ベースラインのMRDの状態にかかわりなく、OSおよびRFSをプラセボと比較して有意に改善することが示された。また、経口AZAによる治療は、MRD陰性の期間をプラセボより6カ月延長させ、そして、ベースライン時に陽性であったMRDがその投与中に陰性化する患者の割合はプラセボ群より高率であるという結果をもたらした(それぞれ、37%と19%)。また、経口AZA群では、MRDへの効果が認められた患者の24%は、治療開始後6カ月以上経過してからMRD陰性の状態となった。MRDの有無はOSおよびRFSの強力な予後予測因子ではあるが、経口AZAによる維持療法では、ベースラインのMRDの状態とはかかわりなくプラセボと比較した場合の生存期間のベネフィットが得られた。(www.clinicaltrials.govにおける登録番号:NCT01757535)

URL

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34995344/

 

コメント

急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia:AML)の治療は、強力な化学療法による寛解導入療法と、それに続く地固め療法(やはり、強力な化学療法)が大原則である。これにより治癒を目指すが、再発リスクの大きい患者には、寛解期に造血幹細胞移植を行うことを考慮する。

近年、AMLを含む造血器悪性腫瘍の治療に使用できる種々の作用機序の薬剤が開発され、維持療法の重要性も注目されている。例えば、再発高リスクあるいは難治性の造血器悪性腫瘍の治療において、ひと昔前までは『最終手段』とも言われていた造血幹細胞移植の後にも何らかの維持療法が考慮される場合もある。

本論文は、寛解期にあるAML患者に対する経口薬による維持療法を主題としたものである。『寛解には導入されているが再発リスクを考慮して造血幹細胞移植をすることが望ましい』状態ではあるが高年齢や合併症などによりそれを行い難いAML患者は多く存在する。本論文では、経口アザシチジンをAML(残存白血病細胞が検出される場合、検出されない場合の両方)の維持療法として使用することによりAML患者の予後改善に寄与できる可能性があること、また、その薬剤はAMLの残存白血病細胞を陰性化させるポテンシャルを持つことなどが示されており、興味深い結果と思われる。

監訳・コメント:大阪大学大学院医学系研究科癌幹細胞制御学寄附講座 寄附講座教授 岡芳弘先生

一覧へ