難病Update

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α-シヌクレインβ-アミロイドタウパーキンソン病

2022.07.26

パーキンソン病におけるタンパク質症と認知機能の縦断的な低下

Proteinopathy and Longitudinal Cognitive Decline in Parkinson Disease

Peter S Myers*, John L O'Donnell*, Joshua J Jackson*, Christina N Lessov-Schlaggar*, Rebecca L Miller*, Erin R Foster*, Carlos Cruchaga*, Bruno A Benitez*, Paul T Kotzbauer*, Joel S Perlmutter*, Meghan C Campbell

*From the Department of Neurology (P.S.M., J.L.O., R.L.M., E.R.F., C.C., P.T.K., J.S.P., M.C.C.), Department of Psychiatry (C.N.L.-S., E.R.F., C.C., B.A.B.), Program in Occupational Therapy (E.R.F., J.S.P.), Department of Genetics (C.C.), Department of Radiology (J.S.P., M.C.C.), Department of Neuroscience (J.S.P.), and Program in Physical Therapy (J.S.P.), Washington University School of Medicine; and Department of Psychological and Brain Sciences (J.J.J.), Washington University in St. Louis, MO.

Neurology. 2022 Jul 5;99(1):e66-e76. doi: 10.1212/WNL.0000000000200344. Epub 2022 Apr 13.

パーキンソン病(Parkinson disease:PD)患者には認知機能の低下が認められることが多く、これはα-シヌクレイン、タウ、およびβ-アミロイドの蓄積量の増加と関連している可能性がある。この研究では、それぞれのタンパク質がPDにおける認知機能の縦断的な低下の予測因子であるかどうかを検討する。すべての参加者(PD n=152、対照n=52)を縦断的研究に組み入れ、CSF中のタンパク質(α-シヌクレイン、タウ総量[タウ]、β-アミロイド42[β-アミロイド])や、β-アミロイドPETスキャン、APOE遺伝子型(ε4+、ε4-)を調べた。階層的線形成長モデルを用いてそれぞれのタンパク質指標が認知機能の変化の予測因子であるかどうかを検討し、多変量Cox比例ハザードモデルを用いて認知症に変わるまでの期間を予測した。

CSF中β-アミロイドの測定値は、記憶の低下(P=0.04)および全般的な認知機能の低下(P=0.01)の予測因子であった。APOE遺伝子型は、ε4+の参加者はε4-の参加者よりも視空間機能の低下が速かった(P=0.03)。β-アミロイドPETは、すべての認知機能測定指標において有意な予測因子であった(いずれもP≦0.004)。CSF中α-シヌクレインおよびタウはいずれも認知機能の低下の予測因子ではなかった。β-アミロイド関連指標(CSF、PET、APOE)はすべて、認知症発症までの期間の予測因子でもあった。β-アミロイドPETを予測因子とするモデルがデータと最もよく適合した。

URL
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35418463/

コメント
パーキンソン病の経過中に認知症を合併することは、よく知られており、認知症を呈するパーキンソン病(PD)は、病理的にはレビー小体型認知症(DLB)とほぼ同一であるが、DLBの方がアルツハイマー病理の併存が多いと言われている。最近では、神経変性疾患は、引き起こすたんぱく質の種類で分類されることもあり、パーキンソン病は、α-シヌクレインの異常蓄積により神経細胞が変性し、運動症候を呈すると言われている。しかし、多彩な非運動症候、特に認知症状を起こす機序や、惹起するタンパク質は明らかではない。

今回、β-アミロイドの蓄積またはそのリスクは、一貫してPDにおける認知機能の低下および認知症発症までの期間の予測因子であった。このことから、β-アミロイドはPDにおける認知機能の変化の予後に関する指標およびバイオマーカーとなる可能性が高いことが示唆された。β-アミロイドの蓄積が、認知症状を呈するすべての疾患に共通して存在することを示唆することを指摘した帰納法的論文と考えられ、興味があり取り上げた。

監訳・コメント:国立病院機構 大阪南医療センター 神経内科 狭間 敬憲先生

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