難病Update

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Anti-mullerian hormoneIVF treatmentOvarian reserve

2022.07.26

炎症性腸疾患患者の卵巣予備能と体外受精治療の成績:システマティックレビューとメタアナリシス

Ovarian reserve and IVF outcomes in patients with inflammatory bowel disease: A systematic review and meta-analysis

Honghao Sun*, Jiao Jiao*, Feng Tian, Qing Liu, Jiansu Bian*, Rongmin Xu, Da Li*, Xiuxia Wang*, and Hong Shu

*Center of Reproductive Medicine, Shengjing Hospital of China Medical University, Shenyang, China

EClinicalMedicine. 2022 Jul 1;50:101517. doi: 10.1016/j.eclinm.2022.101517. eCollection 2022 Aug.

炎症性腸疾患(IBD)は、生殖年齢期の女性の卵巣予備能を低下させているとの報告がある。それに対しIBDに対する体外受精(IVF)の治療が効果があるのかの検討が必要である。そこで、2022年5月までのIBDと卵巣予備能との関係に関連する研究論文を検索してメタ分析を行った。オッズ比(OR)、相対リスク、標準化平均差(SMD)またはハザード比(HR)などの必要な測定値、あるいはそれらを算出するデータが示されている論文を対象とした。短報、症例報告、メタアナリシスと専門家の見解を含む総説論文は除外した。対象としたのは9論文で、IBD患者数は2,386例であった。システマティックレビューとメタアナリシスにより、IBD患者の卵巣予備能またはIVF成績を対照群と比較し、SMD、HR、OR、それらの95%信頼区間(95%CI)を算出した。

IBD患者では、対照群と比較すると卵巣予備能を示す抗ミュラー管ホルモンの値が低かった(SMD=-0.38、95%CI:-0.67 - -0.09)。年齢階層で区分してみると、30歳未満の患者では対照群と比較しても卵巣予備能低下がみられなかった(SMD=-0.56、95%CI:-2.28 - 1.16)。30歳以上のIBD患者では対照群と比較すると卵巣予備能低下がみられた(SMD=-0.75、95%CI:-1.07 - -0.43)。寛解期にあるIBD患者では卵巣予備能の低下を認められなかった(SMD=-0.10、95%CI:-0.32 - 0.12)。活動期の患者では卵巣予備能低下がみられた(SMD=-1.30、95%CI:-1.64- -0.96)。IVF治療による妊娠率はIBD患者と対照群との間に差異は認められなかった(OR=0.87、95%CI:0.55 - 1.37)。

URL

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35812999/

コメント
IBDの生殖年齢の女性患者においてメタ分析を行い、卵巣予備能とIVF治療の結果についてみた。その結果、IBD患者において卵巣予備能が低下していることが示された。しかし、寛解期のIBD患者の卵巣予備能は卵巣予備能が健康な人と変わりはなかった。IVF治療の結果についてもIBD患者と卵巣予備能が健康な人とでは差異は認められなかった。子供を妊娠する計画のあるIBDの女性患者にとって疾病管理を行うことで卵巣予備能が健康な人と差異がないこと、またIVFの治療結果も違いがないことが確認された。本研究は不均一で、質の異なる研究報告を集めてメタ分析した結果であるので、実証的な追加研究による検証が必要と考えられる。

監訳・コメント:関西大学 社会安全学研究科 公衆衛生学 高鳥毛 敏雄先生

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