難病Update

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CAR細胞Runk2Runx1骨髄線維症

2022.07.26

Runx1およびRunx2は造血幹細胞の細胞ニッチの線維化を阻害する

Runx1 and Runx2 inhibit fibrotic conversion of cellular niches for hematopoietic stem cells

Yoshiki Omatsu*, Shota Aiba*, Tomonori Maeta*, Kei Higaki*, Kazunari Aoki, Hitomi Watanabe, Gen Kondoh, Riko Nishimura, Shu Takeda, Ung-Il Chung, Takashi Nagasawa

Laboratory of Stem Cell Biology and Developmental Immunology, Graduate School of Frontier Biosciences, Osaka University, Suita, Osaka, 565-0871, Japan.

Nat Commun. 2022 May 12;13(1):2654. doi: 10.1038/s41467-022-30266-y.

骨髄では造血幹細胞(HSC)の維持にニッチと呼ばれる特別の微小環境が不可欠である。CAR細胞(CXCL12-abundant reticular cell:CXCケモカインリガンド12[CXCL12]を高発現する細網細胞)またはレプチン受容体を発現する間葉系幹細胞群は、HSCニッチの主要な構成要素である。分子レベルでのHSCニッチの調節機構についてはよく分かっていない。HSCニッチにおけるRunx転写因子であるRunx1及びRunx2の役割も依然として不明である。本研究により、Runx1は主にCAR細胞で発現すること、またCAR細胞のRunx1とRunx2が共に欠失しているマウスでは線維症と骨形成が亢進し、骨髄中の造血幹細胞および前駆細胞が著減することが示された。In vitroでは、Runx1は転写因子Foxc1により誘発され、CAR細胞における線維化遺伝子の発現を抑制した。このように、成人のHSCニッチでは、ニッチの線維化を防ぎ、HSC及び造血を維持するためにRunx1又はRunx2が必要である。


URL
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/35551452/

コメント
骨髄線維症は不可逆的な造血障害を来す難治性予後不良疾患である。骨髄線維症の発症機構としてCAR細胞が線維芽細胞に変化すると考えられているが、その分子機構は十分に明らかになっていなかった。本研究ではRunx1とRunx2がCAR細胞で高発現していることを見出した。Runx1とRunx2の両方をCAR細胞特異的欠損させてマウスでは、骨髄の血液細胞が著減し、造血幹細胞、前駆細胞および分化細胞が著減していたことが分かった。またそこから単離されたCAR細胞は、線維芽細胞で高発現しているIII型コラーゲン、Ⅳ型コラーゲンの発現が著しく増加していた。組織学的解析を行ったところ骨髄の至る所で線維化が進んでいることが分かった。

Runx1/Runx2ダブルノックアウトCAR細胞にRunx1またはRunx2を強制発現させるとIII型コラーゲン、Ⅳ型コラーゲン遺伝子の発現が低下した。以上より転写因子Runx1とRunx2がCAR細胞の線維化を抑制することにより、造血幹細胞ニッチを維持していることが示唆された。

これらの知見は骨髄線維症の発症メカニズムの解明に貢献するものと考えられる。骨髄線維症においてはCAR細胞でRunx1/Runx2遺伝子が低下することがその進展に重要である可能性があり、CAR細胞でのRunx1/Runx2の低下を防ぐまたは亢進させることが新たな治療標的となるかもしれない。

監訳・コメント:大阪大学大学院医学系研究科 癌ワクチン療法学寄附講座 招へい教授 坪井 昭博先生

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