2022.08.25
McArdle病における筋MRI:欧州の多施設共同観察研究
Muscle MRI in McArdle Disease: A European Multicenter Observational Study
Nicoline Løkken*, Karoline Lolk Revsbech, Laura Nørager Jacobsen, Andrea Martinuzzi, Miguel Ángel Martin, Jordi Díaz-Manera, Cristina Dominguez-Gonzalez, Giovanni Brondani, Olimpia Musumeci, Francesca Granata, Cristina Stefan, Concepción Merino-Sanchez, Claudia Nuñez Peralta, Tahmina Khawajazada, Jorge Alonso-Pérez, Antonio Toscano, John Vissing
*Copenhagen Neuromuscular Center, Rigshospitalet, Copenhagen University Hospital, Copenhagen, Denmark nicoline.loekken@regionh.dk.
Neurology. 2022 Jul 19;10.1212/WNL.0000000000200914. doi: 10.1212/WNL.0000000000200914.Online ahead of print.
糖原病V型(Glycogen storage disease type V:GSDV)すなわちMcArdle病は、古典的には運動不耐や運動誘発性筋肉痛を呈する糖原病である。筋力低下や筋萎縮が生じることがあるが一般的に軽度であり、傍脊柱筋の障害は、文献ではほとんど注目されていない。欧州のGSDV患者コホートにおいて、GSDVと確認された患者および健康な対照者(HC)を対象とし、傍脊柱筋、肩の筋肉、および下肢の筋肉の脂肪置換を磁気共鳴画像法(magnetic resonance imaging:MRI)で定量化することを目的とした。筋脂肪置換の程度は、半定量的な視覚的Mercuriスケールを用いるT1強調画像と個々の筋肉の脂肪分率(FF)を定量的に算出するDixon画像で評価した。
欧州5施設のGSDV患者計57例(年齢44.3±15.2歳)のMR画像と臨床データを評価し、HC30例(年齢42.4±14.8歳)の所見と比較した。GSDV患者はHCと比較して、Mercuri法およびDixon法の両方で、検討したすべてのレベルにおいて傍脊柱筋の脂肪置換が有意に多かった[Dixon法、傍脊柱筋複合FF(GSDV vs HC)、頸椎レベル31.3±13.1 vs 15.4±7.8、胸椎レベル34.5±19.0 vs 16.9±8.6、腰椎レベル43.9±19.6 vs 21.8±10.2(P<0.0001)]。
URL
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35853747/
コメント
糖原病は糖代謝の経路に関与する酵素の異常によって発症する疾患群で、糖をエネルギーとして蓄積するためにグリコーゲンへと変換する系、及び蓄積したグリコーゲンを代謝する系に関わる酵素の先天的異常により糖代謝が障害され、組織にグリコーゲンが蓄積する。障害を受けた酵素の発現部位により肝型と筋型に大別できる。本論文は、筋型を代表する疾病であるGSDV患者は、傍脊柱筋に重度の脂肪置換が認められ、体幹筋の障害による脂肪組織への置き換わりの重要性を指摘したものである。そして、退行性病変のみではなく、継続的な筋損傷に起因すると推測し、今後のGSDV患者の管理にとって重要な意味を指摘した。稀少疾病であるが指定難病であり、筋の易疲労性を主訴とする患者に出会った場合、常に鑑別疾患として念頭におくべき疾病である。個人的なことで恐縮だが、筋型糖原病の他の一つであるⅦ型(Tarui病)の発見者である恩師の垂井を思い出し、帰納法的研究法や実践から理論を導くという、難病患者への対応の教えの一つを再確認させてもらった論文であり取り上げた。