難病Update

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がん免疫療法続発性悪性腫瘍遺伝子改変免疫エフェクター細胞

2022.08.25

遺伝子改変免疫エフェクター細胞による治療を受けた患者における続発性悪性腫瘍の発生に関する長期追跡研究

Long-term follow-up for the development of subsequent malignancies in patients treated with genetically modified IECs

David H M Steffin*, Ibrahim N Muhsen, LaQuisa C Hill*, Carlos A Ramos*, Nabil Ahmed*, Meenakshi Hegde*, Tao Wang, Mengfen Wu, Stephen Gottschalk, Sarah B Whittle*, Premal D Lulla*, Maksim Mamonkin*, Bilal Omer*, Rayne H Rouce*, Andras Heczey*, Leonid S Metelitsa*, Bambi J Grilley*, Catherine Robertson*, Virginia Torrano*, Natalia Lapteva*, Adrian P Gee*, Cliona M Rooney*, Malcolm K Brenner*, Helen E Heslop*

*Center for Cell and Gene Therapy, Baylor College of Medicine-Texas Children's Hospital, Houston, TX.

 

Blood. 2022 Jul 7;140(1):16-24. doi: 10.1182/blood.2022015728.

続発性悪性腫瘍は、がん患者の長期の追跡においてみられる、過去に十分量の報告のある合併症である。最近、遺伝子改変免疫エフェクター(immune effector:IE)細胞を用いた治療が血液悪性腫瘍に有効であることが示され、また、固形腫瘍の臨床試験でも評価が行われつつある。IE細胞治療の短期的合併症については十分な報告があるが、続発性悪性腫瘍の発生を含む長期の追跡結果について述べた文献は限られている。我々は、当医療機関における小児および成人を対象とした医師主導臨床試験27試験で治療を受けた患者340例のデータを、後方視的に解析した。全例が、再発および/または難治性の血液悪性腫瘍または固形がんの治療のため、γ-レトロウイルスベクターを用いて遺伝子改変されたIE細胞の投与を受けていた。累積1027年の長期追跡期間中、13例(3.8%)に計16件の別のがん(血液悪性腫瘍4件および固形腫瘍12件)が発生した。遺伝子改変IE細胞の投与を受けた患者における最初の続発性悪性腫瘍の5年累積発生率は3.6%(95%信頼区間[CI]1.8 - 6.4%)であった。続発性腫瘍16件中11件で生検が実施され、ポリメラーゼ連鎖反応法で導入遺伝子陽性の検体はなかった。続発性悪性腫瘍が発生した患者13例で末梢血単核細胞(PBMC)の複製可能レトロウイルスのテストを行い、その結果は陰性であった。続発性悪性腫瘍の罹患率は低く、標準的な化学療法と同程度であった。これらの結果から、γ-レトロウイルスベクターを用いて遺伝子改変されたIE細胞を投与することは続発性悪性腫瘍のリスクを増加させないことが示唆される。

 

URL

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/35325065

コメント

がん免疫療法は、悪性腫瘍に対する治療法としてすでに一定の地位を獲得している。そのがん免疫療法のひとつで最近注目されているものとして、CAR(chimeric antigen receptor:キメラ抗原受容体-T細胞療法がある。これは、悪性腫瘍細胞の表面抗原を特異的に認識する受容体をコードする遺伝子を、ウイルスベクターなどを用いて、患者から取り出したTリンパ球に導入し、その遺伝子改変されたTリンパ球を患者の体内にもどし腫瘍を免疫的に攻撃するものである。現在、難治性のB細胞型急性リンパ性白血病、B細胞型悪性リンパ腫、多発性骨髄腫などに用いられ、症例が蓄積されつつある。

このCAR-T細胞療法など遺伝子改変された免疫細胞を体内にもどすことをベースにした免疫治療を行う場合、当然、その治療法の安全性についての懸念が生じる。特に、この治療を受けた患者が長期生存した場合、その治療関連合併症としての続発性悪性腫瘍の発生やその頻度は非常に重要なテーマである。本論文においては、それについての蓄積されたデータが示されている。

監訳・コメント:大阪大学大学院医学系研究科癌幹細胞制御学寄附講座 寄附講座教授 岡芳弘先生

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