難病Update

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FSHD全身筋骨格MRI定量的筋解析画像バイオマーカー顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー

2022.09.27

全身の脂肪を基準とするMRIを用いたFSHDの定量的筋解析:縦断的解析と横断的解析のための複合スコア

Quantitative Muscle Analysis in FSHD Using Whole-Body Fat-Referenced MRI: Composite Scores for Longitudinal and Cross-Sectional Analysis

Michelle L Mellion*, Per Widholm, Markus Karlsson, André Ahlgren, Rabi Tawil, Kathryn R Wagner, Jeffrey M Statland, Leo Wang, Perry B Shieh, Baziel G M van Engelen, Joost Kools, Lucienne Ronco*, Adefowope Odueyungbo*, John Jiang, Jay J Han, Maya Hatch, Jeanette Towles, Olof Dahlqvist Leinhard, Diego Cadavid*

*Fulcrum Therapeutics, Cambridge, MA.

Neurology. 2022 Jun 24;10.1212/WNL.0000000000200757. doi: 10.1212/WNL.0000000000200757. Online ahead of print.

顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(Facioscapulohumeral muscular dystrophy:FSHD)は、進行性の筋力低下を特徴とする稀な疾患である。筋肉全体を解析する定量的な全身筋骨格MRI(whole-body musculoskeletal MRI:WB-MSK-MRI)プロトコルを開発し、臨床試験における変化への反応性がより高い画像バイオマーカーとなる可能性を評価することを目的とした。FSHD1と確認されていて、臨床的重症度が

2 - 4(Ricciスケール、範囲0 - 5)、針生検の適応となるshort tau inversion recovery(STIR)陽性の下肢筋が1つ以上ある18 - 65歳の参加者を6施設で登録し、画像検査を4 - 12週の間隔を空けて2回実施した。筋脂肪浸潤(muscle fat infiltration:MFI)、筋脂肪分率(muscle fat fraction:MFF)、除脂肪筋量(lean muscle volume:LMV)の容量解析を実施した。進行のリスクがきわめて高い筋を含む全身複合スコア、ならびにtimed up and go(TUG)、FSHD-TUG、および到達可能な作業空間(reachable workspace:RWS)を含む関連する機能的転帰との相関がみられる機能的横断的複合スコアを開発した。

17例がこの研究に登録された。52日(範囲36 - 85日)の時点で追跡調査のMRIが16回実施された。機能的横断的複合スコア(MFFとMFI)に中程度ないし強い相関がみられた:TUG(ρ=0.71、ρ=0.83)、FSHD-TUG(ρ=0.73、ρ=0.73)、RWS(左前腕:ρ=-0.71、ρ=-0.53、右前腕:ρ=-0.61、ρ=-0.65)。変動係数と被験者内標準偏差は中等度障害筋(MFI≧0.10、MFF<0.50)のほうが正常筋(MFI<0.10、MFF<0.50)よりも高かった。

URL
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35750498/

コメント
FSHDは文字通り、顔面、肩甲帯、上腕の筋力低下と筋萎縮が特徴の筋ジストロフィーで、臨床症状、4番染色体長腕のD4Z4短縮などの遺伝学的検査で診断される(FSHD患者のほとんどがFSHD1で、残りがメチル化制御遺伝子異常によるFSHD2、今回の対象はFSHD1)。指定難病であり、臨床及び遺伝学的診断後、外来でfollowするが、進行すると全身の筋力低下が見られるようになる。現段階では、病態を修飾する治療法はなく、患者さんによりそい、カウンセリングなどの精神的な支援も重要な治療となる。今後遺伝子治療などの病態修飾的治療も可能となるであろうが、今回開発されたWB-MSK-MRIプロトコルによる機能的複合スコアは、疾患の多様性を捉え、FSHDに関連する臨床エンドポイントと相関する筋障害を評価することを可能にしており(クラスIIのエビデンス)、治験薬の効果判定に、有効なことがうかがえ、貴重な報告と考え、取り上げた。

監訳・コメント:国立病院機構大阪南医療センター 神経内科 狭間敬憲先生

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