2022.09.27
米国の都市部に住む増悪する好酸球性喘息の小児患者に対するメポリズマブの投与(MUPPITS-2):無作為化・二重盲検・プラセボ対照並行群間の比較試験による評価
Mepolizumab for urban children with exacerbation-prone eosinophilic asthma in the USA (MUPPITS-2): a randomised, double-blind, placebo-controlled, parallel-group trial
Daniel J Jackson*, Leonard B Bacharier, Peter J Gergen, Lisa Gagalis, Agustin Calatroni, Stephanie Wellford, Michelle A Gill, Jeffrey Stokes, Andrew H Liu, Rebecca S Gruchalla, Robyn T Cohen, Melanie Makhija, Gurjit K Khurana Hershey, George T O'Connor, Jacqueline A Pongracic, Michael G Sherenian, Katherine Rivera-Spoljaric, Edward M Zoratti, Stephen J Teach, Meyer Kattan, Cullen M Dutmer, Haejin Kim, Carin Lamm, William J Sheehan, R Max Segnitz, Kimberly A Dill-McFarland, Cynthia M Visness, Patrice M Becker, James E Gern, Christine A Sorkness, William W Busse, Matthew C Altman, US National Institute of Allergy and Infectious Disease's Inner City Asthma Consortium
*Department of Pediatrics, University of Wisconsin School of Medicine and Public Health, Madison, WI, USA; Department of Medicine, University of Wisconsin School of Medicine and Public Health, Madison, WI, USA. Electronic address: djj@medicine.wisc.edu.
Lancet. 2022 Aug 13;400(10351):502-511. doi: 10.1016/S0140-6736(22)01198-9.
米国の都市部の黒人又はヒスパニックの小児において、好酸球性喘息発症者とその死亡者が目立つ。抗インターロイキン5(IL-5)抗体薬の「メポリズマブ(mepolizumab)」が成人の好酸球性喘息患者の増悪抑制効果があることが明らかにされているが、小児に関する治療成績のデータが乏しい。そこで、好酸球性喘息の小児患者にメポリズマブが増悪回数を減少させるのか評価することとした。患者群は、米国の都市部の9か所の医療センターの6 - 17歳の小児患者である。これらの患者は社会経済的に恵まれない地域に住み、喘息の増悪経験者(過去1年間に2回以上)であり、血中の好酸球数が150個/μL以上の者である。患者群を「メポリズマブ投与群(6 - 11歳:40 mg、12 - 17歳:100 mg)」と「プラセボ投与群」に1:1の割合で無作為に割り付けて、無作為化二重盲検プラセボ対照並行群間試験を行った。2017年11月1日 - 2020年3月12日の間の小児患者は585例あり、390例を選んだ。そのうちの335例が基準を満たした。その中の290例をメポリズマブ投与群(患者群146例)またはプラセボ投与群(対照群144例)に割り付けた。試験が完了できたのは248例であった。患者群と対照群には治療として、ガイドラインに基づく治療に加え、4週に1回のメポリズマブ又はプラセボの注射を52週間実施した。参加者及び医師、および評価スタッフには割付けの状況がわからないように実施した。評価にあたり、脱落者を除外せずにすべての者を含めて解析した(intention to treat analysis)。主要評価項目は52週間の間に喘息増悪に対する全身性コルチコステロイドが必要となり投与された回数とした。治療効果機序は、試験担当医師が鼻腔内トランスクリプトームモジュール解析を用いて評価を行った。本試験はClinicalTrial.govに登録されている(NCT03292588)。
52週間の平均喘息増悪回数は、メポリズマブ投与群では0.96回(95%CI 0.78 - 1.17)、プラセボ投与群では1.30回(1.08 - 1.57)であった。その比は0.73(0.56 - 0.96、P=0.027)であった。有害事象の発生は、メポリズマブ投与群146例中42例(29%)、プラセボ投与群144例中16例(11%)であった。また、メポリズマブ投与による死亡者はいなかった。つまり、メポリズマブの投与は小児の好酸球性喘息患者においても増悪回数の減少が認められた。
URL
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35964610/
コメント
メポリズマブ(mepolizumab)は成人の好酸球性重症喘息に適応が承認されているIL-5を標的としたモノクローナル抗体医薬品である。欧州と米国で好酸球性重症喘息の6 - 17歳の患者に対しても適応承認がされている。しかしまだデータは不足している。本研究は、好酸球性重症喘息の罹患率と死亡率が高い米国の都市部の黒人及びヒスパニック系の小児患者を対象に、治験評価したものである。小児患者でも好酸球性喘息の増悪回数を有意に減らす効果が示された。種々の難病の発症メカニズムや治療方法はわからない点が多いが、免疫学研究の成果を応用した生物学的薬剤の開発がなされてきていることは心強い感じがする。しかし、まだ好酸球性喘息のメカニズムがわかっているとは言えず、その解明が必要である。
監訳・コメント:関西大学大学院社会安全学研究科公衆衛生学 教授 高鳥毛敏雄先生