2022.10.26
中年期における赤血球中のオメガ3脂肪酸とMRIマーカーおよび認知機能との関連:The Framingham Heart Study
Association of Red Blood Cell Omega-3 Fatty Acids With MRI Markers and Cognitive Function in Midlife: The Framingham Heart Study
*Glenn Biggs Institute for Alzheimer's & Neurodegenerative Diseases, UT Health San Antonio, San Antonio, TX, USA satizabal@uthscsa.edu.
Neurology. 2022 Oct 5;10.1212/WNL.0000000000201296. doi: 10.1212/WNL.0000000000201296.Online ahead of print.
中年成人から成る地域ベースのサンプルにおいて、赤血球中のオメガ3脂肪酸の濃度と脳の老化を示すMRIマーカーおよび認知機能マーカーとの横断的関連を検討し、さらにAPOE遺伝子型による効果修飾について探索した。Framingham Heart Studyの第3世代コホートとOmni 2コホートの参加者で、2回目の調査に参加した者を対象とした。ドコサヘキサエン酸(docosahexaenoic acid:DHA)+エイコサペンタエン酸(eicosapentaenoic acid:EPA)の濃度をオメガ3指数として算出した。線形回帰モデルを用いて、オメガ3脂肪酸濃度と脳MRI指標および認知機能との関係を、交絡する可能性のある因子で調整して検討した。さらに、MRIおよび認知機能転帰におけるオメガ3脂肪酸値とAPOE遺伝子型(e4キャリア vs. 非キャリア)との交互作用について検証した。
認知症および脳卒中のない参加者2,183例(平均年齢46歳、女性53%、APOE-e4キャリア22%)を対象とした。多変量モデルでは、オメガ3指数が高いことが海馬の体積が大きいこと(標準偏差単位β±標準誤差0.003±0.001、P=0.04)および抽象的推論が良好であること(0.17±0.07、P=0.013)と関連していた。APOE-e4の有無で層別化すると、APOE-e4非キャリアではDHA濃度またはオメガ3指数が高いことと海馬の体積が大きいことが関連していた。さらに、APOE-e4キャリアにおいてのみ、オメガ3の予測因子すべてが高値であることが白質高信号域の量が少ないことと関連していた。
URL
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36198518/
コメント
人生において中年期の大きな出会いが、高齢期の人生を豊かにする話は多く聞くところであるが、逆に、豊かな高齢者生活を送った人の、中年期の大きな出会いの有無はあまり検討されていない。今回の論文は、その「逆は必ずしも真ならず」を検討したものである。認知症に関連すると示唆されている脳の特定の箇所の状態と、認知症の予防に有効な食事成分と言われているオメガ3脂肪酸などとの関連を中年期において検討したものである。
臨床的に認知症がなく中年が多くを占めるコホートにおいて、オメガ3脂肪酸濃度が高いことが脳構造および認知機能が良好であることと関連していることを示唆していた。さらに遺伝因子についても検討され、疾患と関連する遺伝因子が多数あり、個々では頻度が低いというcommon disease-multiple rare variants仮説、すなわち、これらの関連性はAPOE遺伝子型によって異なっており、APOEの有無によって代謝パターンが異なる可能性が示唆された。やはり食事も中年期での出会いが重要なようである。