2022.10.26
全身性強皮症の死亡と重症度の性差に対する抗トポイソメラーゼ抗体のリスク評価:Leiden CCISSコホートとEUSTARコホートの10年解析
Sex-specific risk of anti-topoisomerase antibodies on mortality and disease severity in systemic sclerosis: 10-year analysis of the Leiden CCISS and EUSTAR cohorts
Sophie I E Liem*, Maaike Boonstra*, Saskia le Cessie, Antonella Riccardi, Paolo Airo, Oliver Distler, Marco Matucci-Cerinic, Cristian Caimmi, Elise Siegert, Yannick Allanore, Tom W J Huizinga*, René E M Toes*, Hans U Scherer*, Jeska K de Vries-Bouwstra*, on behalf of the EUSTAR collaborators
* Department of Rheumatology, University Medical Center, 2300 RC, Leiden, Netherlands
Lancet Rheumatol 2022;4: e699–709, doi: 10.1016/S2665-9913(22)00224-7
全身性強皮症患者の死亡や重症度に性差があるが、これに抗トポイソメラーゼI抗体(anti-topoisomerase I antibody:ATA)がどの程度影響しているのか明らかではない。オランダのLeidenのCombined Care in Systemic Sclerosis(CCISS)前向きコホートとEuropean Scleroderma Trials and Research(EUSTAR)国際コホートにおける、びまん皮膚硬化型全身性強皮症、間質性肺疾患、肺高血圧症の患者を対象として検討した。患者の診断と分類の基準として、2013年米国リウマチ学会/欧州リウマチ学会(American College of Rheumatology–European League Against Rheumatism:ACR–EULAR)を用いた。
患者の適格者を、自己抗体、皮膚のサブタイプ、間質性肺疾患のX線所見の少なくとも1つ以上あるものとし、発症日がわかっている者とした。対象者を、性別と自己抗体に基づき6つの群に分類した。(1)抗セントロメア抗体(anticentromere antibody:ACA)陽性女性、(2)ACA陽性男性、(3)ACAとATAがともに陰性女性、(4)ACAとATAがともに陰性男性、(5)ATA陽性女性、(6)ATA陽性男性、である。Kaplan-Meier曲線とCox比例ハザードモデルを用いて解析をした。主要転帰は全死因死亡とし、副次的転帰はびまん皮膚硬化型全身性強皮症、間質性肺疾患、肺高血圧症の重症度とした。
CCISSコホートの2009年4月1日 - 2022年1月1日の間の708例中445例(男性101例、女性344例)、EUSTARコホートの2004年6月1日- 2018年3月28日までの8,590例中4,263例(男性783例、女性3,480例)が適格者であった。ATAの発現頻度は、CCISSコホートでは男性39% vs 女性19%(P<0.0001)、EUSTARコホートでは男性49% vs 女性38%(P<0.0001)であり、いずれのコホートにおいても男性のほうが有意に高かった。
10年以内の死亡者割合は、CCISSコホートではATA陽性男性30% vs ATA陽性女性12%、EUSTARコホートでは同33% vs 15%であった。年齢、人種、自己抗体を調整した後も全死因死亡の最重要リスクは男性であることであった[CCISSではHR 2.9(CI 1.5 - 5.5)、EUSTARではHR 2.6(2.0 - 3.4)]。
URL
https://www.thelancet.com/journals/lanrhe/article/PIIS2665-9913(22)00224-7/fulltext
コメント
これまで全身性強皮症の男性の方が女性より頻繁にATAを発現していること、また男性患者の転帰が悪いことが臨床的に示されている。そのため、ATAの特異的免疫応答が全身性強皮症関連間質性肺疾患の進行と関連していると考えられている。
そこで、2つの大きなコホートを使い、その死亡率が男性に高い原因が、男性にATA保有率の高いことによるのではないかと考え、交絡要因を補正して分析を行ったのが本研究であった。しかし、「男性であること」が死亡率や重症要因であることが示され、ATA陽性というだけで男性に死亡率が高いということが説明できなかった。
全身性強皮症患者に関連する性差を生み出している要因について、ATA以外の要因を含めてさらなる研究が必要であるとしている。
監訳・コメント:関西大学大学院社会安全学研究科公衆衛生学 教授 高鳥毛敏雄先生