2022.11.28
パーキンソン病および進行性核上性麻痺の患者における31P-MRSIを用いた生体エネルギー欠乏の評価
Assessment of Bioenergetic Deficits in Patients With Parkinson Disease and Progressive Supranuclear Palsy Using 31P-MRSI
Jannik Prasuhn*, Martin Göttlich, Britt Ebeling*, Sofia Kourou*, Friederike Gerkan*, Christina Bodemann*, Sinja S Großer*, Katharina Reuther*, Henrike Hanssen*, Norbert Brüggemann
* Institute of Neurogenetics, University of Lübeck, Lübeck, Germany.
Neurology.2022 Oct 4;10.1212/WNL.0000000000201288. doi: 10.1212/WNL.0000000000201288.Online ahead of print.
生体エネルギー障害は、ミトコンドリア機能障害が主因であり、神経変性による運動障害疾患の病態生理現象として確立されている。本研究では、特発性パーキンソン病患者(patient with idiopathic Parkinson's disease:PwPD)30例、および進行性核上性麻痺患者(patient with progressive supranuclear palsy:PwPSP)16例、健康な対照者(healthy control:HC)25例を対象に、診察、構造的磁気共鳴画像法、前脳と大脳基底核の31リン磁気共鳴スペクトロスコピー画像法を実施し、パーキンソン症候群の鑑別診断に役立つ可能性を検討した。
PwPDでは、高エネルギーリン酸代謝物が顕著に減少しており、とくに大脳基底核で際立っていた(健康な対照者との比較で-42%、PwPSPとの比較で-43%、P<0.0001)。この結果は脳の形態計測上の違いによる交絡を受けていなかった。これに対しPwPSPでは、高エネルギーエネルギー代謝物は正常値であった。したがって、形態計測と代謝の神経画像法を組み合わせることにより、PwPDとPwPSPを最大0.93(95%CI:0.91 - 0.94)の正確度で鑑別できた。
URL
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36195453/
コメント
パーキンソン症候群は、多数の疾患からなるが、なかでもPwPDとPwPSPの鑑別には困難を伴うことが多い。両疾患には予後に相違があり、早期の鑑別診断はICにおいては特に重要である。経験豊富な医師では、初診時に診察室に入室してくる患者さんの、歩容や顔面の表情だけでも鑑別診断ができることもある。普通は、それぞれの診断基準に基づき実施する。今回の研究で、ミトコンドリア機能障害と生体エネルギーの枯渇は、PwPDの病態生理に寄与するが、PwPSPには寄与しないことが示された。神経画像法によるこれらのパーキンソン症候群の鑑別診断において、形態計測と代謝の画像法の組み合わせにより、PwPDとPwPSPを鑑別できるというクラスIIIのエビデンスが得られ、臨床診断の進歩に寄与する報告であり、興味があり取り上げた。
監訳・コメント:国立病院機構 大阪南医療センター 神経内科 狭間 敬憲先生