難病Update

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2022.11.28

クロノタイプと認知機能との関連性:観察研究と双方向メンデル無作為化による検討

Chronotype and cognitive function: Observational study and bidirectional Mendelian randomization

Jiao Wang*, Ying Ru Li*, Chao Qiang Jiang, Wei Sen Zhang, Tong Zhu, Feng Zhu, Ya Li Jin, Tai Hing Lam, Kar Keung Cheng, and Lin Xu*

*School of Public Health, Sun Yat-sen University, Guangzhou, China

eClinicalMedicine November 01, 2022; DOI:https://doi.org/10.1016/j.eclinm.2022.101713

クロノタイプと認知機能との関係についてこれまでの観察研究からは、夜型のクロノタイプとの間に関連があるとの報告がある。そこで、中国の広州バイオバンクコホート(GBCS)の2008年から2012年の14,582人を対象として、クロノタイプ(睡眠中央時刻)の遺伝子と認知機能(Mini-Mental Status Examination[MMSE]及びDelayed Word Recall Test[DWRT])との関連性をみた。解析は多変量線形回帰を用いた。双方向メンデル無作為化を用いて、クロノタイプについては英国バイオバンクと23andMe(n=697,828)から得られた207の一塩基多型(SNP)を用いた。また、認知機能については、英国バイオバンクとCOGENT consortium(n=257,841)からの127のSNPを用いた。その関連性の分析を行った結果、夜型のクロノタイプは、認知機能が良好であることと関連していた(MMSEスコアではβ=0.14、95%CI:0.09 - 0.19、DWRTスコアではβ=0.07、95%CI:0.04 - 0.11)。遺伝的因子との関連については朝型と夜型のクロノタイプと認知機能の間には関連は認められなかった(β=−0.02、95%CI:−0.05 - 0.01)。むしろ朝型のクロノタイプの遺伝的因子は良好な認知機能であるオッズ比が低かった(英国バイオバンク:オッズ比=0.88、95%CI:0.83 - 0.93、23andMe:0.87、95%CI:0.80 - 0.95)。

URL
https://www.thelancet.com/journals/eclinm/article/PIIS2589-5370(22)00443-6/

コメント
クロノタイプは、24時間の昼夜サイクル、サーカディアンリズムであり、朝型や夜型に分けられる。これまでの観察研究では、クロノタイプと脳の生理機能や認知機能、さらに代謝障害や精神障害など様々な疾患との間に関連があるとの報告があり、夜型のクロノタイプが広い年齢層の認知能力と関連があるとの報告があった。そこで、中国人の大規模なコホートを用いて、夜型のクロノタイプと認知機能との因果関係について検討した。しかし、クロノタイプが認知機能との間に関連があるとの証拠が本研究では得られなかった。夜型のクロノタイプは、より良い認知機能につながっており、その逆ではなかった。夜型のクロノタイプの成人には安心感を与えるものであった。

監訳・コメント:関西大学大学院 社会安全学研究科公衆衛生学 教授 高鳥毛敏雄先生

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