難病Update

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ニボルマブネオアジュバントリラトリマブ悪性黒色腫

2022.11.28

切除可能な悪性黒色腫におけるリラトリマブとニボルマブによるネオアジュバント療法

Neoadjuvant relatlimab and nivolumab in resectable melanoma

Rodabe N Amaria*, Michael Postow, Elizabeth M Burton, Michael T Tezlaff, Merrick I Ross, Carlos Torres-Cabala, Isabella C Glitza, Fei Duan, Denái R Milton, Klaus Busam, Lauren Simpson, Jennifer L McQuade, Michael K Wong, Jeffrey E Gershenwald, Jeffrey E Lee, Ryan P Goepfert, Emily Z Keung, Sarah B Fisher, Allison Betof-Warner, Alexander N Shoushtari, Margaret Callahan, Daniel Coit, Edmund K Bartlett, Danielle Bello, Parisa Momtaz, Courtney Nicholas, Aidi Gu, Xuejun Zhang, Brinda Rao Korivi, Madhavi Patnana, Sapna P Patel, Adi Diab, Anthony Lucci, Victor G Prieto, Michael A Davies, James P Allison, Padmanee Sharma, Jennifer A Wargo, Charlotte Ariyan, Hussein A Tawbi

*Department of Melanoma Medical Oncology, The University of Texas MD Anderson Cancer Center, Houston, TX, USA. rnamaria@mdanderson.org.

Nature. 2022 Nov;611(7934):155-160. doi: 10.1038/s41586-022-05368-8. Epub 2022 Oct 26.

切除不能な進行期悪性黒色腫患者において、リラトリマブ(relatlimab)とニボルマブ(nivolumab)の併用免疫療法にはニボルマブ単独療法を上回る無増悪生存期間の改善が認められている。本試験では、ステージIIIまたは少数の転移がみられるステージIVの切除可能な悪性黒色腫の患者を対象にこのレジメンについて検討した(NCT02519322)。ニボルマブ480 mgおよびリラトリマブ160 mgを4週ごとに2回投与するネオアジュバント療法後に手術を実施し、その後アジュバント療法として両剤を10回投与した。主要評価項目は病理学的完全奏効(pCR)率とした。併用療法を受けた30例におけるpCR率は57%、病理学的全奏効率(何らかの奏効が認められた患者の割合)は70%であった。固形がんの治療効果判定のためのガイドライン(RECIST)第1.1版に基づくX線画像上の奏効率は57%であった。ネオアジュバント療法中、グレード3 - 4の有害事象は観察されなかった。1年後および2年後の無再発生存率は、何らかの病理学的奏効がみられた患者では100%と92%、奏効がみられなかった患者では88%と55%であった(P<0.005)。ネオアジュバント開始前の腫瘍内の免疫細胞浸潤の亢進および治療中のM2マクロファージの減少と病理学的奏効との関連が認められた。本試験の結果から、リラトリマブとニボルマブによるネオアジュバント療法は高いpCR率を誘導することが示された。ネオアジュバント療法中の安全性も、他の免疫併用療法より良好であった。RELATIVITY-047試験の結果に本試験のデータを組み合わせることによって、この新たな免疫療法レジメンの有効性と安全性がさらに確かなものとなった。

RELATIVITY-047(CA224-047)試験は、未治療の転移性または切除不能な悪性黒色腫患者を対象に、リラトリマブとニボルマブの固定用量配合剤での併用療法をニボルマブ単剤療法と比較評価した国際共同無作為化二重盲検第Ⅱ/Ⅲ相臨床試験です。

URL
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/36289334/

コメント
免疫療法、特にチェックポイント阻害剤はがん治療の一翼を担うようになってきているが今までは術後再発例、手術不能例や化学療法抵抗例に用いられることが多かった。術前治療を免疫療法単独で行うというのは新しい試みだと思われる。本試験ではリラトリマブとニボルマブ併用とニボルマブ単独との比較試験となっている。リラトリマブは抗リンパ球活性化遺伝子3(LAG-3)抗体であるが、LAG-3はPD-1とCTLA-4に次ぐ第3の免疫チェックポイント分子として注目されている。LAG-3は、エフェクターT細胞および制御性T細胞(Treg)に発現する細胞表面分子であり、T細胞の応答、活性化および増殖を抑制する機能を有している。LAG-3とPD-1は、2つの異なる抑制性免疫チェックポイントで、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)上に同時発現する場合が多く、腫瘍を介したT細胞の疲弊に関与する。抗LAG-3抗体のリラトリマブとPD-1阻害薬のニボルマブによる併用療法は、2つの異なる機序によるT細胞の抑制を解除することでT細胞活性化をより可能にすることで、腫瘍の細胞死を促進する。本研究では非常に期待できる結果を出しており、今後の悪性腫瘍の治療に新たな道を開くことが期待される研究と思われた。他癌腫へ対象を広げた治験を期待する。

監訳・コメント:大阪大学大学院医学系研究科 癌ワクチン療法学寄附講座 招へい教授 坪井 昭博先生

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