2023.02.27
MOG抗体関連疾患、多発性硬化症、およびAQP4-IgG陽性視神経脊髄炎スペクトラム障害における腫瘤性脱髄
Tumefactive Demyelination in MOG Ab–Associated Disease, Multiple Sclerosis, and AQP-4-IgG–Positive Neuromyelitis Optica Spectrum Disorder
Laura Cacciaguerra*, Pearse Morris, William O Tobin*, John J Chen*, Samantha A. Banks*, Paul Elsbernd, Vyanka Redenbaugh*, Jan-Mendelt Tillema*, Federico Montini, Elia Sechi, A. Sebastian Lopez-Chiriboga, Nicholas Zalewski, Yong Guo*, Maria A. Rocca, Massimo Filippi, Sean J. Pittock*, Claudia Francesca Lucchinetti*, Eoin P. Flanagan
* Department of Neurology and Mayo Clinic Center for Multiple Sclerosis and Autoimmune Neurology, Mayo Clinic, Rochester, MN, USA.
Neurology. 2023 Jan 23;10.1212/WNL.0000000000206820. doi: 10.1212/WNL.0000000000206820. Online ahead of print.
ミエリンオリゴデンドロサイト糖蛋白IgG関連疾患(MOGAD)における腫瘤性脳病変について、頻度、臨床、検査、およびMRIの特徴を明らかにし、多発性硬化症(MS)およびアクアポリン4-IgG陽性視神経脊髄炎スペクトラム障害(AQP4+NMOSD)の場合と比較することを試みた。Mayo ClinicのデータベースからMOGAD患者194例とAQP4+NMOSD患者359例を後ろ向きに検索し、MRIで腫瘤性脳病変(最大横径2 cm以上)が1つ以上ある患者を対象とした。
腫瘤性脱髄を有する患者108例(MOGAD 43例、AQP4+NMOSD 16例、MS 49例)の腫瘤性病変の頻度は、MOGAD(43/194[22%])のほうがAQP4+NMOSD(16/359[5%])よりも高かった(P<0.001)。MOGADのほうがMSよりも頻度が高かった臨床的特徴に頭痛(18/43[42%] vs. 10/49[20%]、P=0.03)と傾眠(12/43[28%] vs. 2/49[4%]、P=0.003)があり、傾眠はAQP4+NMOSD(0/16[0%])との比較でも頻度が高かった(P=0.02)。脳脊髄液分析では、オリゴクローナルバンド陽性の頻度がMOGAD(2/37[5%])のほうがMS(30/43[70%])よりも低かった(P<0.001)。
URL
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36690455/
コメント
腫瘤様脱髄病変とは、2 cm以上の大きさを持ち、周囲への浮腫やmass effectを伴う中枢神経系炎症性病巣の総称である。MS,AQP4+NMOSD、今回の主題疾病であるMOGADなどがある。MOGはグリア細胞の1つであるオリゴデンドロサイトの表面に発現する蛋白質で高い抗原性を示し、抗MOG抗体は中枢神経に炎症性脱随病変を生じさせる。
これら腫瘤性脱髄性脳病変と腫瘍性疾患の鑑別診断は困難であることが多い。今回、腫瘤性病変はMOGADに多くみられるが、予後不良とは関連しない。腫瘤性MOGADの臨床、MRI、および脳脊髄液の特徴は、腫瘤性MSとは異なっており、腫瘤性AQP4+NMOSDに近かったが、例外として病変の消失はMOGADのほうが多かった。確定診断のためには侵襲の大きい脳生検が必要だが、臨床的診断での鑑別も可能な報告であり、確定診断のための脳生検へのICに役だつ貴重な報告と考えられ取り上げた。
監訳・コメント:国立病院機構 大阪南医療センター 神経内科 狭間 敬憲先生