難病Update

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アルツハイマー病レカネマブレビー小体型認知症レビー小体病

2023.01.27

病理学的にレビー小体型認知症またはアルツハイマー病と確認された患者における断片化された文字の認知

Perception of Fragmented Letters by Patients With Pathologically Confirmed Dementia With Lewy Bodies or Alzheimer Disease

David P Salmon*, Denis S Smirnov, David G Coughlin, Joanne M Hamilton, Kelly M Landy, J Vincent Filoteo, Annie Hiniker, Lawrence A Hansen, Douglas Galasko

*From the Department of Neurosciences (D.P.S., D.S.S., D.G.C., J.M.H., K.M.L., J.V.F., L.A.H., D.G.), Psychiatry (J.V.F.), and Pathology (A.H., L.A.H.), University of California, San Diego. dsalmon@ucsd.edu.

Neurology. 2022 Nov 1;99(18):e2034-e2043. doi: 10.1212/WNL.0000000000201068. Epub 2022 Aug 26.

 

レビー小体型認知症患者は、アルツハイマー病(AD)患者よりも視覚検査の成績が悪い。そこで、臨床で広く用いられている視知覚能力検査の成績から、剖検で確認されたレビー小体病(LBD)患者とAD患者を効率よく識別できるかどうか、検査成績にLBD病理の重症度との相関がみられるかどうかを検討した。軽度ないし中等度認知症の患者(n=42)および認知機能に問題のない対照者(n=22)に、見た目に70%虫食い状態でランダムに表示されるアルファベット文字を識別するFragmented Letters Test(断片文字検査)、さらに視空間検査およびエピソード記憶検査を実施した。剖検時に、認知症症例はLBDあり(n=19、すべてAD併発)、またはADのみ(n=23)であることを確認した。

LBD患者は、AD患者(B=-2.80±0.91、P=0.009)および健康な対照者(B=-3.34±1.09、P=0.01)と比較して、年齢、性別、学歴、Mini-Mental State検査のスコア、および完全な文字が何であるかを言う能力で調整した後のFragmented Letters Testの成績が悪かった。AD患者は対照者と差がなかった(B=-0.55±1.08、P=0.87)。検査は感度73%、特異度87%でLBD患者とAD患者を効率よく識別した。

URL

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36028327/

コメント

LBDは、純粋自律神経障害病、パーキンソン病、レビー小体型認知症(DLB)の3つに分類されるのが一般的である。認知症を伴うものは、DLBであり、病理所見による分類ではDLBとしての純粋型は少なく、AD病理を伴うものが多い(今回の検討は19例全例この群である)。今回の論文で、Fragmented Letters Testの成績により、軽度ないし中等度の段階にある認知症で、LBD病理を有する患者とAD病理のみを有する患者を効率よく識別できた。

認知症薬のトピックスであるレカネマブは、ADを惹起させる因子の一つと考えられている神経毒性を有するAβプロトフィブリルに選択的に結合し、脳内から除去することでADの病態進行を抑制する疾患修飾作用が示唆され、米国食品医薬品局(FDA)から2023年1月に認可された。日本でも、1月16日、医薬品医療機器総合機構(PMDA)に申請が出された。レカネマブの適応は、早期ADに限定されると考えられる。ところが、早期の鑑別診断において、血液や髄液でのアミロイドチェックではDLBは鑑別できないことが多い。今回の論文の方法は鑑別診断に利用可能であり、興味があり取り上げた。

監訳・コメント:国立病院機構 大阪南医療センター 神経内科 狭間 敬憲先生

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