難病Update

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Antiepileptic drugs (AED)Epilepsynested case-control studyParkinson’s diseasePrimary care prescription

2023.01.27

英国バイオバンク登録者における抗てんかん薬処方とパーキンソン病の発症リスクとの関連性の検討

Association Between Antiepileptic Drugs and Incident Parkinson Disease in the UK Biobank

Daniel Belete*, Benjamin M Jacobs*, Cristina Simonet*, Jonathan P Bestwick*, Sheena Waters*, Charles R Marshall*, Ruth Dobson*, Alastair J Noyce*

*Preventive Neurology Unit, Wolfson Institute of Population Health, Faculty of Medicine and Dentistry, Queen Mary University of London, London, United Kingdom.

JAMA Neurol. 2022 Dec 27. doi: 10.1001/jamaneurol.2022.4699. Online ahead of print.

「てんかん」と「パーキンソン病(PD)」との間に関連性があるとの報告がなされているが、それは「抗てんかん薬(AED)」の処方との関係がないのか検討課題となっている。本研究は、その点を英国のバイオバンク登録者(UKB)の2021年6月30日時点のデータをもとに、コホート内症例対照研究により検討した。UKBは、2006 - 2010年に40 - 69歳の英国在住の50万人以上の参加者からなるコホートである。45%の登録者のプライマリケア受診時の処方データがある。この登録者の英国の病院医療情報登録(HES)においてPDと診断された者を「症例群」とし、「症例群」と「年齢、性別、人種・民族、社会経済的地位」を6:1でマッチさせた者を「対照群」として分析をした。プライマリケアの受診時の処方データのあった登録者(n=222,106)のAEDの処方記録を調査した。PDの診断日前にAEDを処方されていた者を分析対象とした。欠損データがある1,477例を除外した。AEDは、カルバマゼピン、ラモトリギン、レベチラセタム、バルプロ酸ナトリウムとした。

解析は、調整ロジスティック回帰モデルを用い、オッズ比および95%CIを算出し評価した。分析対象は、症例群1,433例、対照群8,598例であった。症例群1,433例の性別は男性873例(60.9%)、人種は白人が1,397例(97.5%)であった。年齢中央値は71歳(四分位範囲[IQR]65 - 75歳)であった。AED処方とPDの新規診断との間のオッズ比1.80(95%CI 1.35 - 2.40)であった。薬剤別ではカルバマゼピンのオッズ比は1.43(0.97 - 2.11)、ラモトリギン2.83(1.53 - 5.25)、レベチラセタム3.02(1.51 - 6.05)、バルプロ酸ナトリウム3.82(2.41 - 6.05)であった。また、抗てんかん薬処方箋交付回数は1 - 1354回(中央値10回)であり、処方箋の発行回数が多いほどPDリスクは高かった。

URL

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36574240/

コメント

てんかんとPDとの関連性を示す研究報告がこれまであったが、AEDを処方された患者におけるPDのリスクを本格的に検討し、AEDの処方との関連を示唆する最初の研究論文である。本研究は、症例対照研究の手法で行ったものであり、因果関係の結論はできないので、今後追跡研究の手法により確認する必要がある。ところで、英国でこのような研究が可能であるのは、英国の医療と医療情報の仕組みがあるからである。英国では住民は初期診療を通してしか病院に受診できず、その病院のほとんどが公営で医療情報は統合されて管理されるので、臨床研究が可能な状況がある。

監訳・コメント:関西大学大学院 社会安全学研究科 公衆衛生学 高鳥毛 敏雄先生

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