難病Update

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DMT保健医療システム多発性硬化症疾患修飾薬超過医療費

2023.03.28

多発性硬化症に関連する直接的な医療費:カナダBritish Columbia州の住民を対象としたコホート研究(2001 – 20年)

Direct Health Care Costs Associated With Multiple Sclerosis: A Population-Based Cohort Study in British Columbia, Canada, 2001–2020

Amir Khakban*, Elisabet Rodriguez Llorian*, Kristina D Michaux*, Scott B Patten*, Anthony Traboulsee*, Jiwon Oh*, Larry D Lynd; CanProCo Study Group

*From the Collaboration for Outcomes Research and Evaluation (A.K., E.R.L., K.D.M., L.D.L.), Faculty of Pharmaceutical Sciences, and Division of Neurology (A.T.), Department of Medicine, University of British Columbia, Vancouver; Department of Community Health Sciences (S.B.P.), University of Calgary, AB; Division of Neurology (J.O.), St. Michael's Hospital, University of Toronto; and Centre for Health Evaluation and Outcome Sciences (CHÉOS) (L.D.L.), St. Paul's Hospital, Vancouver, BC, Canada.

Neurology. 2023 Feb 28;100(9):e899-e910. doi: 10.1212/WNL.0000000000201645. Epub 2022 Nov 30.

この研究の目的は、カナダBritish Columbia州における多発性硬化症(MS)の超過医療費を定量化することである。2001 - 20年の住民の行政保健医療データを用いて、MS患者を対象とした後ろ向きマッチングコホート研究を行い、直接的な医療費(外来サービスの利用、入院、調剤された薬剤)を個人別に算出した。identity linkと正規分布をもつ一般化線形モデルを用いて、MSの超過費用をMS患者と対照者の費用の平均差として推定した。費用はすべて2020年にカナダドルで報告されたものである。

MS患者17,071例を対照者85,355例とマッチさせた。全体で72.4%が女性でありコホート登録時の平均年齢は46.1歳であった。MSの超過費用は1患者年あたり$6,881(95%CI:$6,713 - $7,049)であった。超過費用に占める入院費、外来費、薬剤費の割合は、それぞれ25%、10%、65%であった。疾患修飾薬(DMT)が少なくとも1種類処方されていたMS患者の超過費用($13,267、95%CI:$12,992 - $13,542)はDMT非使用者($3,469、95%CI:$3,297 - $3,641)よりも高く、DMT頻回使用者ではさらに高かった($24,835、95%CI:$24,528 - $25,141)。

URL

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36450607/

コメント

国により、医療提供体制や医療保険制度は異なる。いきなり余談で恐縮だが、今回の論文を読んでいて、学生時代の恩師である多田羅浩三先生に、英国の医療システムを教えていただいた時のことを懐かしく思い出した。出来の悪い学生で、記憶違いかもしれないが、プライマリー・ケアやGP(General Practitioner)システムは、日本の開業医中心のシステムをさらに進化させたもので、感銘を受けた記憶がある。

今回の論文はカナダBritish Columbia州におけるMSの医療費負担に関するものであるが、MS患者と対照者の費用の平均差として推定した超過費用は相当高額であり、薬剤、とくにDMTが費用増の最大の要因となっている。著者らが指摘するように、早期診断や時宜を得たDMTの使用などの疾患管理戦略によって、患者の生活の質を向上させつつ将来および現在の費用をいかに埋め合わせることができるかを検討すべきであろう。

今回の論文で、MSの治療についての、とてつもない医療費負担を考えるとき、スモンを契機として、社会的支援を目的の一つとして開始された、日本の指定難病制度や、高額医療負担制度のすばらしさを再確認させられた。DMTのような高額薬剤への対応は、保険料の負担がさらに重くなることが予測されるこれからの少子化時代において、根本的な解決策が求められる。

監訳・コメント:国立病院機構 大阪南医療センター 神経内科 狭間 敬憲先生

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