難病Update

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covid-19Outpatient treatmentretrospective cohort studySARS-CoV-2Systemic autoimmune rheumatic diseases

2023.03.28

COVID-19罹患全身性自己免疫性リウマチ性疾患の患者に対するSARS-CoV-2外来治療の有無による転帰の比較:後ろ向きコホート研究

Outcomes with and without outpatient SARS-CoV-2 treatment for patients with COVID-19 and systemic autoimmune rheumatic diseases: a retrospective cohort study

Grace Qian*, Xiaosong Wang*, Naomi J Patel, Yumeko Kawano*, Xiaoqing Fu, Claire E Cook, Kathleen M M Vanni*, Emily N Kowalski*, Emily P Banasiak*, Katarina J Bade*, Shruthi Srivatsan, Zachary K Williams, Derrick J Todd*, Michael E Weinblatt*, Zachary S Wallace, Jeffrey A Sparks*

* Division of Rheumatology, Inflammation, and Immunity, Brigham and Women's Hospital, Boston, MA, USA (60 Fenwood Road, Boston, MA, 02115).

medRxiv. 2022 Oct 30;2022.10.27.22281629. doi: 10.1101/2022.10.27.22281629. Preprint

 

全身性自己免疫性リウマチ性疾患の患者は免疫抑制状態にあり、COVID-19による重症化リスクを有している。これらの患者がCOVID-19に罹患した場合、SARS-CoV-2の外来治療の有無により転帰はどう異なるのか明らかにされていない。そこで、Massachusetts General Brigham Integrated Health Care System(米国、ボストン)の登録者のコホートを使い後ろ向きに、経時的に転帰とCOVID-19のリバウンドの状況を評価した。対象者は、「全身性自己免疫性リウマチ性疾患」を有し、2022年1月23日から5月30日までの間にCOVID-19を発症した18歳以上の者である。COVID-19の感染は、「PCR検査」ないし「抗原検査」の陽性の者である。指標日は陽性確認日として評価した。全身性自己免疫性リウマチ性疾患の患者は、登録データーの診断コードと処方内容で判断した。SARS-CoV-2の外来治療は診療記録をもとに判定した。主要な転帰として、COVID-19による重症度、入院であり、死亡は指標日後30日以内のものとした。COVID-19のリバウンドの者は、治療によりSARS-CoV-2の検査陰性となり、その後の検査により陽性となった文書記録がある者とした。分析は、多変量ロジスティック回帰を用いて行った。分析対象者は、2022年1月23日から5月30日までの704例とした。平均年齢58.4歳、性別は男性168例(24%)、女性536例(76%)、人種別は白人590例(84%)、黒人39例(6%)、疾患別は関節リウマチの者が347例(49%)であった。

SARS-CoV-2の外来治療者は期間中に有意に上昇していた(P<0.0001)。外来治療者は704例中の426例(61%)であり、その使用薬剤はニルマトレルビル・リトナビル307例(44%)、モノクローナル抗体105例(15%)、モルヌピラビル5例(1%)、レムデシビル3例(<1%)、併用療法6例(1%)であった。入院または死亡の転帰は、外来治療を受けた者では426例中9例(2.1%)、受けなかった者では278例中49例(17.6%)であった。年齢、性別、人種、併存疾患、腎機能を調整したオッズ比は0.12(95%CI:0.05 - 0.25)であった。経口薬を使った外来治療を受けた318例中の25例(7.9%)にCOVID-19のリバウンドの記録があった。

URL
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36324801/

コメント

全身性自己免疫性リウマチ性疾患の患者は、SARS-CoV-2に対する薬剤を用いた外来治療を受けることにより、重症化、入院、死亡のリスクが低減することを示した論文である。COVID-19は自然治癒する者が多い感染症であるが、本研究は、全身性自己免疫性リウマチ性疾患の患者のような免疫状態が低い者に対しては、COVID-19に感染した場合にはSARS-CoV-2に対する薬剤を使った外来治療を行うことが有効であり、重要であることを示すものである。しかし、外来治療を受けた者の約8%にCOVID-19のリバウンドがみられたことも報告している。SARS-CoV-2のリバウンドについてはさらなる研究が必要であるとしている。

監訳・コメント:関西大学大学院 社会安全学研究科 公衆衛生学 教授 高鳥毛敏雄先生

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