難病Update

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ペリサイト神経血管単位血小板由来成長因子β血液脳関門

2023.05.29

CSF中PDGFRβと加齢、血液脳関門損傷、神経炎症、およびアルツハイマー病の病理学的変化との関連

Associations of CSF PDGFRβ With Aging, Blood-Brain Barrier Damage, Neuroinflammation, and Alzheimer Disease Pathologic Changes

Claudia Cicognola*, Niklas Mattsson-Carlgren, Danielle van Westen, Henrik Zetterberg, Kaj Blennow, Sebastian Palmqvist, Khazar Ahmadi, Olof Strandberg, Erik Stomrud, Shorena Janelidze, Oskar Hansson

*Clinical Memory Research Unit, Department of Clinical Sciences, Lund University, Lund, Sweden claudia.cicognola@med.lu.se.

Neurology. 2023 May 3;10.1212/WNL.0000000000207358. doi: 10.1212/WNL.0000000000207358. Online ahead of print.

神経血管単位を構成するペリサイトは、血液脳関門(BBB)損傷を受けると脳脊髄液(CSF)中に血小板由来成長因子β(PDGFRβ)を放出する。CSF中のPDGFRβが、アルツハイマー病(ADや加齢に伴う、認知症にいたるさまざまな病理学的変化と関連するかどうかを検証することを目的とした。スウェーデンのBioFINDER-2コホートの認知障害のない被験者(CU)408例、軽度認知障害の被験者(MCI)175例、および認知症の被験者188例、計771例を対象に、CSF中のPDGFRβを測定した。続いて、加齢、BBB機能障害、グリア活性化の神経炎症との関連におけるCSF中PDGFRβの役割も解析した。

コホートの平均年齢は67歳(CU=62.8歳、MCI=69.9歳、認知症=70.4歳)で、男性が50.1%(CU=46.6%、MCI=53.7%、認知症=54.3%)であった。CSF中のPDGFRβ濃度が高いことは、年齢が高いこと(b=19.1、β=0.5、95%CI=16 - 22.2、P<0.001)、CSF中の神経炎症(グリア活性化)マーカーであるYKL-40(b=3.4、β=0.5、95%CI=2.8 - 3.9、P<0.001)およびGFAP(b=27.4、β=0.4、95%CI=20.9 - 33.9、P<0.001)の増加、QAlbで測定したBBB完全性の悪化(b=37.4、β=0.2、95%CI=24.9 - 49.9、P<0.001)と関連していた。PDGFRβには、APOEε4遺伝子型、PET画像検査でのAβおよびtau病理、MRI測定での脳萎縮および白質脳病変(WML)との関連は認められなかった(P>0.05)。

URL
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37137722/

コメント
神経血管単位は神経細胞とそれを囲む脳血管内皮細胞、ペリサイト、アストロサイト(星状膠細胞)、さらにはオリゴデンドロサイト、ミクログリアや細胞外マトリックスを一つの構成単位とする概念で、これらは互いに密接かつ複雑に関わり合いながら神経細胞の機能維持を担っている(脳循環代謝 25:109 - 115、2014)。一方、ペリサイトの特異的マーカーと言われているPDGFRβは、加齢、炎症、BBBの崩壊、さらに急性期脳梗塞後の梗塞周囲アストログリーシスおよびオリゴデンドロサイト新生を促進時(神経機能回復を促進する可能性)、などでの上昇が言われている。今回、CSF中のPDGFRβに反映されるペリサイトの損傷は、神経炎症とともに、加齢によるBBBの破綻に関与している可能性があることなどは今まで通りの結果であるが、ADによる病理学的変化とは関連していないことが初めて指摘された。つまり、ADの原因の一つに加齢が言われているが、AD発症には加齢+αの必要性を指摘した論文である。プラスアルファの真の原因検索への動機づけになる興味ある論文であり、取り上げた。

監訳・コメント:国立病院機構 大阪南医療センター 神経内科 狭間 敬憲先生

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