2023.06.27
大脳皮質基底核症候群の臨床放射線学的評価と神経病理学的評価
Clinicoradiologic and Neuropathologic Evaluation of Corticobasal Syndrome
Dror Shir*, Nha Trang Thu Pham, Hugo Botha*, Shunsuke Koga, Naomi Kouri, Farwa Ali*, David S Knopman*, Ronald C Petersen*, Brad F Boeve*, Walter K Kremers, Aivi T Nguyen, Melissa E Murray, R Ross Reichard, Dennis W Dickson, Neill Graff-Radford, Keith Anthony Josephs*, Jennifer Whitwell, Jonathan Graff-Radford
*Department of Neurology, Mayo Clinic, Rochester, MN 55905, USA.
Neurology. 2023 Jun 2;10.1212/WNL.0000000000207397. doi: 10.1212/WNL.0000000000207397. Online ahead of print.
大脳皮質基底核症候群(CBS)は、非対称性のパーキンソン症状、硬直、ミオクローヌス、および失行を特徴とする臨床表現型である。当初は大脳皮質基底核変性症(CBD)によるものと考えられていたが、臨床病理学的研究が増えてきたことにより、多様な神経病理が明らかになっている。本研究の目的は、Mayo Clinicで経過観察され、死亡前にCBSと診断された患者の臨床データ、脳MRI、および神経病理学的データを剖検時の神経病理学的分類に従ってレビューし、CBD診断基準の陽性的中率(PPV)を明らかにすることである。
コホートの構成はCBS患者113例で、61例(54%)が女性であった。平均±SD罹病期間は7±3.7年で、平均±SD死亡年齢は70.5±9.1歳であった。神経病理学的な主診断は、CBD 43例(38%)、進行性核上性麻痺(PSP)27例(24%)、アルツハイマー病(AD)17例(15%)、TDP-43封入体を伴う前頭側頭葉変性症(FTLD-TDP)10例(9%)、びまん性レビー小体病/アルツハイマー病(DLBD/AD)7例(6%)、その他の診断9例(8%)であった。初診時にpossible CBDの臨床基準を満たしていた67例のうち、27例が病理学的にCBDと確認され、PPVは40%であった。
URL
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37268436/
コメント
今回の論文の「みそ」は、「症状は萎縮部位に依存し、組織像には拠らない」ということである。すなわち、神経変性疾患の臨床診断は、障害されている部位による脱落症状や陽性症状などを総合してつけられる。そのため、多様性を持ち、症候群という形をとり、診断は困難を伴う。確定診断は病理診断であり、障害されている部位からではなく、障害された病態に基づかれ、最近では、神経細胞に障害をもたらす蛋白による分類も増えてきた。CBDも最近ではCBSとのとらえ方が多い。今回の論文は、CBSではさまざまな神経変性疾患の集まりであるが、今回の検討でも指摘されるように、臨床上の違いや局所の画像上の違いが、背景にある神経病理を予測する一助となる。しかし、今回の検討で、現在のCBD診断基準のPPV解析を行ったところ、診断性能は十分でないことが明らかになった。著者らも指摘するように、CBDに対して十分な感度と特異度を有するバイオマーカー探しが必要である。
監訳・コメント:国立病院機構 大阪南医療センター 神経内科 狭間 敬憲先生