難病Update

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インターロイキン-22下部消化管GVHD腸内細菌叢

2023.06.27

下部消化管の急性移植片対宿主病(GVHD)に対する一次治療としてのインターロイキン-22および全身コルチコステロイドの第2相研究

A phase 2 study of interleukin-22 and systemic corticosteroids as initial treatment for acute GVHD of the lower GI tract

Doris M. Ponce*, Amin M. Alousi, Ryotaro Nakamura, John Slingerland, Marco Calafiore*, Karamjeet S. Sandhu, Juliet N. Barker*, Sean Devlin, Jinru Shia, Sergio Giralt*, Miguel-Angel Perales*, Gillian Moore*, Samira Fatmi*, Cristina Soto*, Antonio Gomes, Paul Giardina, LeeAnn Marcello, Xiaoqiang Yan, Tom Tang, Kevin Dreyer, Jianmin Chen, William L. Daley, Jonathan U. Peled*, Marcel R. M. van den Brink* and Alan M. Hanash*

 

*Department of Medicine, Memorial Sloan Kettering Cancer Center, New York, NY.

 

Blood. 2023 Mar 23;141(12):1389-1401. doi: 10.1182/blood.2021015111.

 

移植片対宿主病(GVHD)は、同種造血幹細胞移植後の病的状態や死亡の主要な原因の一つである。実験モデルでは、インターロイキン-22が上皮再生を促進し、もともと備わっている抗微生物分子を誘導することが示されている。本多施設共同単群第2相研究では、新規に診断された下部消化管の急性GVHD患者を対象に、新規組換え(リコンビナント)ヒトインターロイキン-22ダイマーであるF-652の安全性と有効性を、全身コルチコステロイドとの併用で評価した。最も多く発生した有害事象は、血球減少および電解質異常であり、用量規定毒性は認められなかった。患者27例中19例(70%;80%信頼区間56- 79%)が、事前に規定した主要評価項目(プライマリーエンドポイント)である28日目の治療奏効を達成した。奏効患者では便中微生物叢に、共生嫌気性菌の増加を特徴とする特有の組成が認められ、そしてそれは、微生物全般のα多様性の増大と関連していた。この所見は、GVHDに関連した腸内細菌叢の異常・乱れ(dysbiosis)の改善を示唆する。本研究により、免疫抑制療法と組織を支える治療法を組み合わせることは、消化管GVHD患者における粘膜損傷の回復と微生物叢の健全さの促進をもたらし得る方法であることが示された。

 

URL

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36399701/

 

コメント

造血幹細胞移植は、難治性の造血器悪性腫瘍を治癒に導き得る画期的な治療法である。その絶大な効果の基礎にあるのは、ドナー由来のリンパ球が患者に残存する悪性腫瘍細胞を他者・非自己と認識し、攻撃し、その残存悪性腫瘍細胞を根絶することである。一方、造血幹細胞移植の独特、かつ、重要な副作用として、移植片対宿主病(graft versus host disease: GVHD)がある。これは、上記のドナー由来のリンパ球が患者の正常細胞を他者・非自己と認識して攻撃するために生じる障害である。

 

通常のGVHDの予防・治療法は、ステロイドやその他の免疫抑制剤を投与し、ドナーリンパ球による患者正常細胞への免疫的攻撃を減弱させるものである。しかしながら、前述の内容から明らかなように、ステロイドや免疫抑制剤は、ドナーリンパ球による残存悪性腫瘍細胞への攻撃も減弱させる。したがって、本論文に紹介されているような『免疫抑制を主眼としたものではない』GVHD治療法は、ドナー由来リンパ球による抗腫瘍効果を減弱させることなくGVHDの改善に寄与できることが期待され、非常に興味深いと思われる。

 

監訳・コメント:大阪大学大学院 医学系研究科 癌幹細胞制御学寄附講座 寄附講座教授 岡芳弘先生

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