2023.06.27
免疫介在性炎症疾患の患者に対するメトトレキサート投与の副作用の層別リスク評価モデルの開発と検証:英国のプライマリケアの下の患者を対象とした研究
Risk stratified monitoring for methotrexate toxicity in immune mediated inflammatory diseases: prognostic model development and validation using primary care data from the UK
英国の大規模外来データベースのClinical Practice Research Datalink(CPRD)GoldとCPRD Aurumを用いて、2007 - 2019年に免疫介在性炎症疾患の診断を受けてプライマリケア(一般医による診療で、以下一般医)の下で、メトトレキサートを6ヵ月以上処方された成人(18歳以上)を対象として、長期投与中の血液検査のモニタリングデーターを用いて、層別化分析によるリスクの予後予測モデルを開発し、そのモデルの有効性を評価した。一般医の下でメトトレキサートの処方後6ヵ月の間に血液検査値の異常により薬剤を中止した者に加え、診療所に受診しなくなった者、死亡者を含めて2019年12月31日までの転帰を評価した。
リスクモデルの開発にCox回帰を使い、オプティミズムの予測因子効果を小さくするためにブートストラッピングを用いた。多重代入法によって欠測した予測因子データを処理した、モデルの性能を評価した。対象者は、13,110例(投与中止などのイベントを有した者854件)であったが、分析対象者は23,999例(投与中止などのイベントを有した者1,486件)であった。11の予測因子の候補(17パラメータ)が含まれた。開発データセットのオプティミズムを補正したR2は0.13、オプティミズムを補正したRoyston D統計は0.79であった。全追跡調査期間の検証データセットの較正スロープは0.94(95%信頼区間[95%CI]0.85 - 1.02)、Royston D統計は0.75(95%CI:0.67 - 0.83)であった。年齢群、免疫介在性炎症疾患の種類、メトトレキサートの投与量をもとに層別に分けた転帰の予後予測モデルは良好に予測できた。日常診療の場で収集された情報を用いた予後予測モデルであるが、メトトレキサートによる長期治療の患者についても使用できる可能性がある。
URL
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37253479/
コメント
日本リウマチ学会のホームページには、メトトレキサートは、日本では1999年に関節リウマチ(RA)治療薬として承認され世界中で最も広く使用されている治療薬であるとしている。メトトレキサートは、多くの患者にとっては副作用が少ないとされているが、量が増えると肝障害などがでてくる者があり、また感染症を発症する、骨髄抑制(血球減少)症状が現れる、間質性肺炎やリンパ増殖性疾患などの注意も必要である。本研究は、血液検査結果をもとにして危険な副作用の発生を予測し、メトトレキサートの適切な投与や中止の判断が行うことに役に立つモデルを開発したもので、このモデルが年齢、炎症状態、メトトレキサートの用量、投与経路に関わらず良好なパフォーマンスであることを示している。免疫介在性炎症疾患に対する長期メトトレキサート治療中の血液検査モニタリングのガイドラインづくりに資する研究である。
監訳・コメント:関西大学 社会安全学研究科 公衆衛生学 高鳥毛 敏雄先生