2023.07.26
顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーにおける4qA特異的遠位D4Z4低メチル化と疾患の重症度および進行との関連
Association of 4qA-Specific Distal D4Z4 Hypomethylation With Disease Severity and Progression in Facioscapulohumeral Muscular Dystrophy
Fuze Zheng*, Liangliang Qiu*, Long Chen*, Ying Zheng*, Xiaodan Lin*, Junjie He*, Xin Lin*, Qifang He*, Yuhua Lin*, Lin Lin*, Lili Wang, Feng Lin*, Kang Yang*, Minting Lin*, Yi Lin*, Ying Fu*, Ning Wang, Zhiqiang Wang
* From the Department of Neurology and Institute of Neurology of First Affiliated Hospital (F.Z., L.Q., L.C., Y.Z., Xiaodan Lin, J.H., Xin Lin, Q.H., Yuhua Lin, L.L., L.W., F.L., K.Y., M.L., Yi Lin, Y.F., N.W., Z.W.), Institute of Neuroscience, Fujian Key Laboratory of Molecular Neurology, Fujian Medical University, Fuzhou; and Department of Neurology (L.Q., Xin Lin, F.L., M.L., Yi Lin, Y.F., N.W., Z.W.), National Regional Medical Center, Binhai Campus of the First Affiliated Hospital, Fujian Medical University, Fuzhou, China.
Neurology. 2023 Jul 18;101(3):e225-e237. doi: 10.1212/WNL.0000000000207418. Epub 2023 May 24.
顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー1型(FSHD1)において、4qA許容ハプロタイプの最も遠位にあるD4Z4反復単位(RU)の領域のメチル化レベルが疾患の重症度および進行と関連しているかどうかを検討する。この研究は、中国のFujian Neuromedical Centre(FNMC)で実施した21年間の後ろ向き観察コホート研究である。全参加者を対象に、10個のCpGを含む最も遠位のD4Z4 RUのメチル化レベルをバイサルファイトシーケンシングで評価し、FSHD1患者をメチル化の割合(%)の四分位に基づいてLM1(低メチル化)、LM2(低 - 中メチル化)、LM3(中 - 高メチル化)、HM(高メチル化)の4群に層別化した。運動機能の評価には、FSHDの臨床スコア(CS)、年齢で補正した重症度尺度(ACSS)、修正Rankin尺度を用いた。
遺伝学的にFSHD1と確定された患者全823例における10個のCpGのメチル化レベルは、健康な対照者(HC)341例よりも有意に低かった。CpG6のメチル化レベルには、CS(r=-0.392)およびACSS(r=-0.432)との負の相関が認められ、最初の筋力低下の発症年齢(r=0.297)との正の相関が認められた。LM1、LM2、LM3、HMの各群における下肢障害の割合はそれぞれ52.9%、44.2%、36.9%、23.4%で、下肢障害の発症年齢は20、26.5、25、26.5歳であった。
URL
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37225433/
コメント
中国の福建医科大学からの論文である。FSHD1の発症メカニズムは未解明な部分も残されているが、4番染色体長腕(4q35)にある、通常は発現していないDUX4遺伝子が発現することが本質的な原因とのコンセンサスができつつある。また、DUX4の発現には、完全なDUX4遺伝子がこの領域に存在すること(4qAハプロタイプ)と、遺伝子発現抑制機構の解除(メチル化低下)の2つが揃うことが必要な条件と考えられている。今回の論文でも、遺伝子発現中はメチル化されていないCpGアイランドの、メチル化により遺伝子発現を抑制することを指摘した。さらに、4q35遠位D4Z4の低メチル化には、疾患の重症度および下肢障害への進行との相関が認められ、低メチル化と臨床症状との関連を初めて明らかにした論文であり、興味があり取り上げた。
監訳・コメント:国立病院機構 大阪南医療センター 神経内科 狭間 敬憲先生