難病Update

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HLA半合致移植移植後シクロホスファミド重症再生不良性貧血

2023.08.28

後天性重症再生不良性貧血の初回治療としての、移植後シクロホスファミドを用いた代替ドナーからの骨髄移植

Alternative donor BMT with posttransplant cyclophosphamide as initial therapy for acquired severe aplastic anemia

Amy E. DeZern*, Marianna Zahurak*, Heather J. Symons*, Kenneth R. Cooke*, Carol Ann Huff*, Tania Jain*, Lode J. Swinnen*, Philip H. Imus*, Nina D. Wagner-Johnston*, Richard F. Ambinder*, Mark Levis*, Leo Luznik*, Javier Bolaños-Meade*, Ephraim J. Fuchs*, Richard J. Jones*, Robert A. Brodsky*

 

*Department of Oncology, The Sidney Kimmel Comprehensive Cancer Center at Johns Hopkins, Baltimore, MD.

 

Blood. 2023 Jun 22;141(25):3031-3038. doi: 10.1182/blood.2023020435.

 

重症再生不良性貧血(severe aplastic anemiaSAA)は、患者の病的状態の程度が高い、また、死亡率が高い骨髄不全症である。この病気は、HLA完全一致ドナーがいる患者は骨髄移植により治療されるが、そのようなドナーがいない患者は免疫抑制療法により治療される。また、人種的・民族的小数者では、しばしば、後者による治療となる。我々は、SAA患者に対する初回治療として、強度減弱前処置(reduced intensity conditioning)によるHLA半合致ドナーからの骨髄移植と移植後シクロホスファミド(PTCy)による移植片対宿主病(GVHD)予防を用いた前向き第2相試験を行った。患者の年齢中央値は25歳(範囲3 - 63歳)で、追跡調査期間中央値は40.9ヵ月(95%信頼区間[CI29.4 - 55.7)であった。登録者の35%以上は、人種的・民族的小数者が占めた。グレード2または4の急性GVHD100日目における累積発生率は7%(95CI:該当値なし[not applicableNA)]- 17)、慢性GVHD2年累積発生率は4%(95CINA - 11)であった。患者27例の1年、2年、そして3年における全生存率は92%(95CI83 - 100)であった。最初の7例は低線量全身照射(200 cGy)を受けたが、これらの患者は生着不全をきたしやすいようであった(7例中3例)。一方、高線量全身照射(400 cGy)を受けた患者20例では生着不全をきたした患者はいなかった(200 vs 400 cGyP0.01Fisherの正確確率検定)。400cGyの全身照射を用いてHLA半合致ドナーからの骨髄移植を受けPTCyによるGVHD予防を行った患者20例では、全生存率は100%で、GVHDは軽度であった。この治療法により、免疫抑制療法の「有害な事象・影響」ならびに「治療が失敗せず患者を長期生存させる率の低さ」が回避されるだけでなく、半合致ドナーを利用することであらゆる患者集団にとって骨髄移植へのアクセスが拡大することになる。

 

URL

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37084383/

 

コメント

白血病などの造血器悪性腫瘍に対して同種造血幹細胞移植を行うと、ドナー由来の免疫細胞はホストである患者の細胞を非自己と認識して攻撃しようとする。宿主である患者の正常組織が攻撃されるのが移植片対宿主病(GVHD)であり、患者の残存白血病細胞が攻撃されるのが移植片対白血病効果(GVL効果)である。後者は、造血器悪性腫瘍患者の長期生存に大きく寄与する。一方、再生不良性貧血は悪性腫瘍でなく、GVL効果は必要でない。つまり、再生不良性貧血の治療というセッティングでは、『病的な骨髄細胞を、健康な骨髄細胞に入れ替える』ことが目的であり、『ドナー由来の免疫細胞が患者の残存悪性細胞を非自己と認識して攻撃する反応(GVL効果)』は不要と考えられる。しかしながら、造血幹細胞移植を行う時には必ずドナー由来の免疫細胞は宿主である患者の細胞を攻撃しようとすることが想定され、したがって、GVHD予防やその治療が必要となる。HLA半合致を含むHLAミスマッチドナーからの移植の場合はHLA完全一致ドナーからの移植の場合よりも重症GVHDの発生リスクが高いことが懸念され、より慎重なGVHDに対するケアーが必要である。

 

本論文においては、重症再生不良性貧血に対してHLA半合致移植を行い有望な臨床成績を導き出している。移植後シクロホスファミドというGVHD対処法を用いてうまく患者状態を管理したものと思われる。本研究は、重症再生不良性貧血の治療選択肢を考える上で非常に興味深い臨床研究である。

 

 

監訳・コメント:大阪大学大学院 医学系研究科 癌幹細胞制御学寄附講座 寄附講座教授 岡芳弘先生

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