難病Update

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neflamapimodアルツハイマー病レビー小体型認知症共通病理

2023.09.28

レビー小体型認知症患者における血漿中のリン酸化タウとneflamapimod投与に対する反応との関連

Association of Plasma Phosphorylated Tau With the Response to Neflamapimod Treatment in Patients With Dementia With Lewy Bodies

John J Alam*, Paul Maruff, Susan Doctrow, Hui-May Chu, Jennifer Conway, Stephen N Gomperts, Charlotte Teunissen

*EIP Pharma, Inc., Boston, MA, USA jalam@eippharma.com.

Neurology. 2023 Sep 1;10.1212/WNL.0000000000207755. doi: 10.1212/WNL.0000000000207755. Online ahead of print.

 

レビー小体型認知症(DLB)患者の一部には、アルツハイマー病(AD)の共通病理との関連がみられ、これが認知機能低下の加速および皮質の萎縮範囲の拡大に結び付く。今回の目的は、AD共通病理のバイオマーカーである血漿中タウの181番目の残基のリン酸化(ptau181)と、DLBのコリン作動性変性過程を標的とするp38αキナーゼ阻害薬neflamapimodの投与効果との関連を評価することであった。AscenD-LB試験は、DLBを対象としてneflamapimodを評価する16週間の第2a相無作為化(1:1)プラセボ対照臨床試験で、試験終了後(すなわち事後)に、投与前の血漿中ptau181濃度を測定し、AD病理のカットオフ値2.2 pg/mLに基づいて参加者をグループ分けした。プラセボとneflamapimod 40 mg 1日3回投与を比較する臨床転帰を、各サブグループにおいて反復測定混合モデルを用いて解析した。

コリンエステラーゼ阻害薬の投与を受けていた軽度-中等度DLBの患者85 例の投与前の血漿中ptau181濃度を測定したところ、ベースライン時のカットオフ値2.2 pg/mL未満が45例、2.2 pg/mL以上 が40例であった。16週間の投与期間において、プラセボとneflamapimod 40 mg TIDを比較したところ、評価したエンドポイントすべてについて、neflamapimod投与による改善はカットオフ値未満の参加者のほうがカットオフ値以上の参加者よりも大きかった。

URL
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37657939/

コメント

DLBの病理による分類では、pure form、common form、AD formの三群に分けるのが一般的で、すべてに、ADの病理が存在する。前頭前野などにAD変化がある場合は、この脳部位のコリン作動性ニューロンの減少進行が早く、前頭葉の萎縮も高度となる。DLBの臨床試験では、AD病理の影響をできるだけ除外することが重要な課題である。DLBにおける経口p38αキナーゼ阻害剤neflamapimodの認知効果に関する二重盲検プラセボ対照16週間試験後(事後)の今回の検討で、血漿中ptau181が上昇している患者を除外することで皮質の神経変性が広範囲に及ぶ患者を除外可能なことが示唆された。DLB患者集団でneflamapimodに反応しやすい患者の割合が高くなる可能性、つまり、よりDLBに特化した臨床試験となる可能性がある。著者らが指摘するように、DLBの臨床試験では試験登録時のAD共通病理の血漿バイオマーカーを層別化変数として考慮すべきである。皮質下認知症の代表疾患のDLBに対する臨床試験上、貴重な指摘をした論文であり、取り上げた。

監訳・コメント:国立病院機構 大阪南医療センター 神経内科 狭間 敬憲先生

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