難病Update

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Ad26.COV2.SワクチンChAdOx1-SワクチンmRNAワクチンギラン・バレー症候群ノーベル賞

2023.10.31

COVID-19ワクチン接種後のギラン・バレー症候群のリスク:全国規模の自己対照症例シリーズ研究

Risk of Guillain-Barré Syndrome Following COVID-19 Vaccines: A Nationwide Self-controlled Case Series Study

Stéphane Le Vu*, Marion Bertrand, Jérémie Botton, Marie-Joelle Jabagi, Jérôme Drouin, Laura Semenzato, Alain Weill, Rosemary Dray-Spira, Mahmoud Zureik

*EPIPHARE Scientific Interest Group in Epidemiology of Health Products (French National Agency for the Safety of Medicines and Health Products - ANSM, French National Health Insurance - CNAM), Saint-Denis, France s.levu@laposte.net.

Neurology. 2023 Oct 3:10.1212/WNL.0000000000207847. doi: 10.1212/WNL.0000000000207847. Online ahead of print.

ギラン・バレー症候群(GBS)は、いくつかのCovid-19ワクチンとの関連が示されているが、一貫性に欠ける。本研究では、大規模集団においてCovid-19ワクチンの種類によるGBSのリスクを定量化することを目的とした。Covid-19ワクチンのデータベースと紐付けられたフランスのNational Health Data System(国民健康データシステム)を用いて、2020年12月27日から2022年5月20日までにGBSで入院した12歳以上の全例を解析し、ワクチン接種に起因すると考えられる症例の数を導き出した。

12歳以上の58,530,770例のうち、88.8%が少なくとも1回Covid-19ワクチン接種を受けており、2,229例が研究期間中にGBSで入院していた。患者の年齢中央値は57歳で、60%が男性であった。1 - 42日間のGBSの相対発生率は、ChAdOx1-Sワクチン初回接種では2.5(95%CI:1.8 - 3.6)で、Ad26.COV2.Sワクチン単回接種では2.4(95%CI:1.2 - 5.0)であった。ワクチン接種に起因すると考えられるGBS症例は、ChAdOx1-Sワクチン初回接種では100万人あたり6.5例、Ad26.COV2.Sワクチン接種では100万人あたり5.7例と推定された。mRNA-1273ワクチン2回目接種後の12 - 49歳(RI 2.6[95%CI:1.2 - 5.5])を除き、mRNAワクチンでの相対発生率推定値の有意な上昇はみられなかった。

URL
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37788935/

コメント
遺伝子組換えワクチンと、遺伝子ワクチンの1つ、mRNAワクチンでGBSの発生リスクを定量化し比較した論文である。ChAdOx1-Sワクチン初回接種後とAd26.COV2.Sワクチン接種後にGBSのリスクが上昇することがわかった。また、mRNAワクチン接種後のGBSのリスクに統計学的に有意な上昇はみられなかった。このことは、著者らが指摘するように現在および将来のmRNAワクチンによるブースター接種の実施という観点から、安心材料である。このmRNA技術の開発者の米ペンシルベニア大学のカタリン・カリコ氏らが2023年のノーベル生理学・医学賞を受賞されたことより、難病のカテゴリーには入らないが、タイムリーな話題であり取り上げた。

監訳・コメント:国立病院機構 大阪南医療センター 神経内科 狭間 敬憲先生

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