難病Update

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C型肝炎インターフェロンフリー直接作用型抗ウイルス薬肝疾患重症度薬物依存

2023.10.31

インターフェロンフリー時代におけるC型肝炎治療成功患者の生命予後:地域ベースのコホート研究

Mortality rates among patients successfully treated for hepatitis C in the era of interferon-free antivirals: population based cohort study

Victoria Hamill*, Stanley Wong, Jennifer Benselin, Mel Krajden, Peter C Hayes, David Mutimer, Amanda Yu, John F Dillon, William Gelson, Hector A Velásquez García, Alan Yeung*, Philip Johnson, Stephen T Barclay, Maria Alvarez, Hidenori Toyoda, Kosh Agarwal, Andrew Fraser, Sofia Bartlett, Mark Aldersley, Andy Bathgate, Mawuena Binka, Paul Richardson, Joanne R Morling, Stephen D Ryder, Douglas MacDonald, Sharon Hutchinson*,Eleanor Barnes, Indra Neil Guha, William L Irving, Naveed Z Janjua, Hamish Innes*

*School of Health and Life Sciences, Glasgow Caledonian University, Glasgow, UK.

BMJ. 2023 Aug 2:382:e074001. doi: 10.1136/bmj-2022-074001.

C型肝炎患者に対し、インターフェロンを使用しなくても、直接作用型抗ウイルス薬(DAA)を使うことによりC型肝炎ウイルス(HCV)を体内から排除してウイルス学的治癒をさせることができるようになっている。インターフェロンフリー時代における治療成功患者の生命予後について、一般人口集団と比較して検討した。

分析対象患者は、カナダのブリティッシュコロンビア州、イギリスのスコットランド、イングランド(イングランドのコホートは肝硬変の患者のみで構成)におけるコホートの患者とした。インターフェロンフリーのDAA薬の治療が始まった2014年から19年におけるC型肝炎治療者は21,790例であった。患者を肝疾患の重症度により、(1)肝硬変を伴わない肝硬変発症前の患者、(2)代償性肝硬変患者、(3)末期の肝疾患患者の3グループに分け、生命予後を評価した。追跡は、抗ウイルス療法完了後から12週の時点から開始し、死亡日または2019年12月31日を終了日とした。主要な評価項目は、患者の粗死亡率、年齢・性別標準化死亡率、標準化死亡率比とし、一般人口集団の死亡率と年齢、性別、年度で調整して比較した。全死因死亡率に関連する因子についてはポアソン回帰を用いて分析した。

追跡期間中に1,572例(7%)の死亡者がいた。主な死因は、薬物関連死(n=383、24%)、肝不全(n=286、18%)、肝がん(n=250、16%)であった。粗全死因死亡率(1,000人年あたりの死亡数)は、ブリティッシュコロンビア州コホート31.4(95%CI:29.3 - 33.7)、スコットランドコホート22.7(95%CI:20.7 - 25.0)、イングランドコホート39.6(95%CI:35.4 - 44.3)であった。全死因死亡率は、重症度グループのいずれの患者群においても一般人口集団と比べて、大幅に高かった。例えば、ブリティッシュコロンビア州では肝硬変を伴わない患者の全死因死亡率は3倍高く(標準化死亡率比2.96、95%CI:2.71 - 3.23、P<0.001)、末期肝疾患の患者では10倍を超える高さであった(13.61、95%CI:11.94 - 15.49、P<0.001)。死亡に関連する要因に関するポアソン回帰分析から、高齢であること、薬物乱用歴、アルコール乱用歴、合併症があるということが死亡率の高さと関連していた。DAAによるC型肝炎治療成功患者の死亡率は一般人口集団と比較すると高く、肝疾患の重症度と関連があることから、感染者を早く発見して治療する必要があることが重要であること、また治療成功患者については継続的な健康管理と患者支援が必要であることを示すものであった。

URL
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37532284/

コメント
C型肝炎ウイルス(HCV)患者に対する治療薬として直接作用型抗ウイルス薬(DAA)が登場し、それを使った治療が行われるようになった。DAAによる治療により、インターフェロンと比べ、飲み薬であり、治療期間が短く、肝硬変患者にも使えるようになり、治療患者の95%でウイルス学的治癒が達成されている。本研究は、肝疾患の重症度の高い患者を含めて治療成功患者の生命予後を一般人口集団と比較して評価を行ったものであった。インターフェロンフリーの時代になっているが、C型肝炎治療成功患者における死亡率は一般人口集団と比較するとまだかなり高かった。死亡率が高い背景として、ウイルス学的に治癒しても、肝炎により受けた肝臓障害の影響が残っていること、またC型肝炎感染要因とみられる薬物依存などの健康影響要因があることなどがあった。この結果は、DAA薬によりウイルス学的に治癒したとしても生命予後の点からは、治療終了患者に対する継続的な支援や経過観察が必要であることを示している。

監訳・コメント:関西大学大学院 社会安全学研究科 公衆衛生学 高鳥毛 敏雄先生

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