Rioghna R Pittock*, Jeremiah A Aakre*, Anna M Castillo*, Vijay K Ramanan*, Walter K Kremers*, Clifford R Jack Jr*, Prashanthi Vemuri*, Val J Lowe*, David S Knopman*, Ronald C Petersen*, Jonathan Graff-Radford*, Maria Vassilaki
*From the Department of Neurology (R.R.P., V.K.R., D.S.K., R.C.P., J.G.-R.), Mayo Clinic, Rochester, MN; The College (R.R.P.), University of Chicago, IL; Departments of Quantitative Health Sciences (J.A.A., A.M.C., W.K.K., R.C.P., M.V.) and Radiology (C.R.J., P.V., V.J.L.), Mayo Clinic, Rochester, MN.
Neurology. 2023 Nov 7;101(19):e1837-e1849. doi: 10.1212/WNL.0000000000207770. Epub 2023 Aug 16.
アルツハイマー病(AD)の治療選択肢は限られており、主に対症療法と生活の質の改善に焦点が当てられてきた。最近、抗βアミロイドモノクローナル抗体(mAb)であるレカネマブが、バイオマーカーで確認された症候性ADの初期の治療薬として米国食品医薬品局から迅速承認を受けた。本研究の主要目的は、地域住民を対象としたMayo Clinic Study of Aging(MCSA)の初期AD参加者に臨床試験におけるレカネマブ治療の適格基準を適用して抗アミロイド治療の一般化可能性を評価することであった。
軽度認知障害(MCI)または軽度認知症であり、PiB PETで脳内アミロイド量の増加が認められたMCSA参加者237例(平均年齢[SD]80.9[6.3]歳、男性54.9%、白人97.5%)を研究対象とした。レカネマブ試験の組入れ基準により、研究対象者は112例(237例の47.3%)に減少した。同試験の除外基準により、適格となる参加者数はさらに絞られて19例(全体で237例の8%)になった。MCIの参加者について(認知に関する追加の基準は適用せず)すべて含まれるように適格性基準を変更した結果、MCIの参加者の17.4%がレカネマブ治療に適格となった。
URL
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37586881/
コメント
レカネマブの適正使用に関する論文である。現在本邦においても、使用開始にあたり、適正使用に関し、適正症例の検討、多職種で連携しての使用が必要など、使用する側の教育なども開始されたばかりである。今回の結果からも、認知障害を有する典型的な高齢者において、抗βアミロイドmAbの適格性は制限されることが推定され、一般化の困難性が指摘された。さらに本邦においては、ADによる軽度認知症が適応であり、年齢相応の物忘れと差がない段階での早期診断が必要になってくる。診断指標のない現在、診断の困難性と共に、無症状に近い段階の患者が将来アルツハイマー病になることが判明した場合の、予想される精神的なダメージへのカウンセリング体制の準備なども必要であろう。レカネマブが厚生労働省からも迅速承認されたことでもわかるように、エポックメイキングなことは間違いない。本論文は、適正使用への考え方に役立つものと考えられ取り上げた。
監訳・コメント:国立病院機構 大阪南医療センター 神経内科 狭間 敬憲先生