難病Update

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PD1ペムブロリズマブ古典的ホジキン病

2023.12.25

KEYNOTE-087試験の5年間にわたる追跡調査:再発・難治性古典的ホジキンリンパ腫に対するペムブロリズマブ単独療法

Five-year follow-up of KEYNOTE-087: pembrolizumab monotherapy for relapsed/refractory classical Hodgkin lymphoma

Philippe Armand*, Pier Luigi Zinzani, Hun Ju Lee, Nathalie A. Johnson, Pauline Brice, John Radford, Vincent Ribrag, Daniel Molin, Theodoros P. Vassilakopoulos, Akihiro Tomita, Bastian von Tresckow, Margaret A. Shipp,* Alex F. Herrera, Jianxin Lin, Eunhee Kim, Samhita Chakraborty, Patricia Marinello, and Craig H. Moskowitz.

*Department of Medical Oncology, Dana-Farber Cancer Institute, Boston, MA.

Blood. 2023 Sep 7;142(10):878-886. doi: 10.1182/blood.2022019386.

ペムブロリズマブ単独療法による第2相試験であるKEYNOTE-087試験(NCT02453594)の以前の解析から、再発・難治性(R/R)の古典的ホジキンリンパ腫(cHL)を有する患者において、そのペムブロリズマブの効果的な抗腫瘍活性と許容できる安全性がすでに示されている。しかし、完全奏効(CR)を達成して治療を中止した後に2回目の治療コースを受けた患者の長期の奏功持続性および転帰は、依然として臨床的に重要な問題である。我々は、追跡調査期間中央値5年を超えたKEYNOTE-087試験のデータを提示する。最長2年間のペムブロリズマブ療法を実施したR/R cHL患者は以下(コホート1 - 3)である:自家造血幹細胞移植(ASCT)とそれに続くブレンツキシマブベドチン(BV)療法後に増悪した患者(コホート1);救済化学療法が奏効せず、ASCTを受けずにBV療法を受けた後に増悪した患者(コホート2);ASCT後に増悪をきたしたがBV療法を受けなかった患者(コホート3)。そして、CRを達成して治療を中止した後にPDとなった患者を、ペムブロリズマブ療法の2回目コースの実施に適格とした。主要エンドポイントは、盲検下の中央判定による客観的奏効率(ORR)および安全性とした。

追跡調査期間中央値は63.7ヵ月で、ORRは71.4%であった(95%信頼区間[CI]64.8 - 77.4、CR率27.6%、部分奏効率43.8%)。奏効期間(DOR)中央値は16.6ヵ月、無増悪生存期間中央値は13.7ヵ月であった。奏効患者の4分の1(完全奏効患者の2分の1を含む)は、4年以上の奏効を維持した。全生存期間は中央値に達しなかった。ペムブロリズマブ療法の2回目コースを受けた患者20例中、評価可能であった患者19例のORRは73.7%(95%CI 48.8 - 90.8)、DOR中央値は15.2ヵ月であった。すべてのグレードを含む治療関連有害事象は患者の72.9%で発現し、グレード3または4の有害事象は患者の12.9%で発現した。治療関連の死亡はなかった。ペムブロリズマブ単独療法は、持続的な奏効を、特にCRを達成した患者で誘導することができる。ペムブロリズマブ療法の2回目コースは、初回CRを達成した後の再発cHL患者に、高頻度で持続的奏効を再度誘導した。

URL
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37319435/

コメント
免疫チェックポイント経路であるPD-1 / PD-L1経路は、生体における悪性腫瘍に対する免疫応答を阻害するものであり、その経路のシグナル伝達をブロックする抗PD-1抗体や抗PD-L1抗体は種々の悪性腫瘍の治療に有効であることが示されている。造血器悪性腫瘍に含まれる古典的ホジキン病も、抗PD-1抗体による治療が有効であることがすでに示されている。

一般に、悪性腫瘍は、種々の治療後に完全寛解の状態になっても一定頻度での再発は避けがたい。本論文では、抗PD-1抗体を用いて完全寛解の状態に到達した後に再発した古典的ホジキン病に対して再度抗PD-1抗体を用いて寛解導入を試みた試験の結果が示されている。結論的に有望な結果が得られたと評価でき、抗PD-1抗体を用いた再度の寛解導入療法は再発・難治性古典的ホジキン病患者の予後改善に寄与するものと思われる。

監訳・コメント:元 大阪大学大学院医学系研究科 癌幹細胞制御学寄附講座 寄附講座教授 岡芳弘先生

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