難病Update

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CLN2TPP1欠損セロイドリポフスチン症2型脳室内投与遺伝子組換えヒトトリペプチジルペプチダーゼ1

2024.01.31

神経セロイドリポフスチン症2型(CLN2)の小児におけるセルリポナーゼ アルファ:オープンラベル延長試験

Safety and efficacy of cerliponase alfa in children with neuronal ceroid lipofuscinosis type 2 (CLN2 disease): an open-label extension study

Angela Schulz*, Nicola Specchio, Emily de Los Reyes, Paul Gissen, Miriam Nickel, Marina Trivisano, Shawn C Aylward, Anupam Chakrapani, Christoph Schwering, Eva Wibbeler, Lena Marie Westermann, Douglas J Ballon, Jonathan P Dyke, Anu Cherukuri, Shailesh Bondade, Peter Slasor, Jessica Cohen Pfeffer

* Department of Pediatrics, University Medical Center Hamburg-Eppendorf, Hamburg, Germany. Electronic address: anschulz@uke.de.

Lancet Neurol. 2024 Jan;23(1):60-70. doi: 10.1016/S1474-4422(23)00384-8.

神経セロイドリポフスチン症2型(CLN2)は遺伝子TPP1の変異により引き起こされる疾患である。セルリポナーゼ アルファは、遺伝子組換えヒトトリペプチジルペプチダーゼ1(TPP1)酵素補充薬である。本研究は、CLN2患児に対するセルリポナーゼ アルファ脳室内の長期投与の安全性・有効性を明かにすることを目的としたものである。本研究はドイツ、イタリア、英国および米国の病院5施設で行った。主試験は、48週間の単群オープンラベル多施設共同用量漸増試験である。また、240週間のオープンラベル延長試験および6ヵ月間の安全性追跡調査を行った。対象患者は、遺伝子解析および酵素検査によってCLN2疾患と診断された3 - 16歳の者とした。セルリポナーゼ アルファは、2週間毎に脳室内に300 mg注入を行った。対照群としてDEM-CHILDデータベースのCLN2患者の中の未治療者とした。主要有効性価項目はCLN2 Clinical Rating Scaleの運動および言語ドメインの統合スコアである。

主試験は、2013年9月13日 - 2014年12月22日の24例(女性15例、男性9例)であった。このうち23例については2015年2月2日 - 2020年12月10日に延長試験としてセルリポナーゼ アルファ300 mgを平均272.1(範囲162.1 - 300.1)週間の投与を行った。本延長試験の完了者は17例、早期中止者は6例であった。治療患者は未治療者と比べ、運動および言語ドメインの統合スコアの逆転しない2点減少またはスコア0点を認めた割合が少なかった(ハザード比0.14、95%信頼区間0.06 - 0.33、p<0.0001)。参加者全員に1件以上の有害事象を認めた。重篤な有害事象は21例(88%)に認めた。脳室内デバイス関連感染者は6例にあり、デバイス再留置を行った者は9件あった。しかし、有害事象による試験中止者はなく、また死亡者もいなかった。つまり、セルリポナーゼ アルファの平均5年以上にわたる投与は、CLN2小児における運動および言語機能低下に対し臨床的に意味のある疾患の進行の遅延を認めた。

URL
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38101904/

コメント
CLN2の疾患の小児を対象としてセルリポナーゼ アルファの安全性と有効性に関する一次試験および延長試験により長期的な転帰を検討した研究である。小児のCLN2疾患患者に2週間ごとに300 mgのセルリポナーゼ アルファを長期脳室内に投与すると未治療対照患者と比べ、主要な運動機能と言語機能の低下速度が遅くなることが示された。また5年以上の追跡により多くの患者は未治療患者の平均余命を超える年齢に達した。本剤の投与が生存期間延長につながることが示された。なお、「CLN2」は日本でも2018年9月14日に厚生労働省により希少疾病用医薬品に指定されて、2019年9月に「セロイドリポフスチン症2型」に対する効能・効果がある医薬品として承認されている。

監訳・コメント:関西大学大学院社会安全学研究科公衆衛生学 特別契約教授 高鳥毛敏雄先生

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