CD24CD24融合たんぱく(CD24Fc/MK7110)GVHDLectin-Gダメージ関連分子パターン(DAMP)
2024.01.30
移植片対宿主病予防を目的としたCD24Fcの第2相試験
A phase 2 trial of CD24Fc for prevention of graft-versus-host disease
John Magenau*, Samantha Jaglowski, Joseph Uberti, Sherif S. Farag, Mary Mansour Riwes*, Attaphol Pawarode*, Sarah Anand*, Monalisa Ghosh*, John Maciejewski*, Thomas Braun, Martin Devenport, Susan Lu, Bhramori Banerjee, Carolyn DaSilva, Steven Devine, Mei-Jie Zhang, Linda J. Burns, Yang Liu, Pan Zheng, and Pavan Reddy*
*Transplantation and Cellular Therapy Program, Rogel Cancer Center, University of Michigan, Ann Arbor, MI.
Blood. 2024 Jan 4;143(1):21-31. doi: 10.1182/blood.2023020250.
骨髄破壊的前処置を用いたヒト白血球抗原適合非血縁ドナー(MUD)からの同種造血幹細胞移植(HSCT)を受ける血液腫瘍患者は、標準的なカルシニューリン阻害薬ベースの予防投与とメトトレキサートの併用投与を受けていても、急性移植片対宿主病(GVHD)を発症することが多い。本試験では、新規のヒトCD24融合タンパク(CD24Fc/MK-7110)の評価を行った。同タンパクは、ダメージ関連分子パターン(DAMP)による炎症を選択的に軽減するとともに、骨髄破壊的前処置後も防御的免疫機能を温存する。本第2a相多施設共同試験では、MUD HSCTを受ける成人患者を対象にして急性GVHD予防としてタクロリムス/メトトレキサートに加えてCD24Fcを投与した場合の薬物動態、安全性および急性GVHD予防についての有効性を評価した(ClinicalTrials.gov番号:NCT02663622)。二重盲検プラセボ対照用量漸増試験(単回投与2用量、複数投与の3群比較で各群6例ずつ)で推奨レジメンを複数投与に決定した後、オープンラベルで複数回投与群を20例追加しマッチさせた対照群と比較して、急性GVHD予防におけるCD24Fcの有効性および安全性について評価した。CD24Fc複数回投与レジメンにより、持続的な薬物濃度の維持ならびに単回投与レジメンと同等の安全性が認められた。180日時点でのグレード3 - 4の急性GVHDのない生存率は、CD24Fc用量拡大コホート(CD24Fc複数回投与群)では96.2%(95%信頼区間[CI]75.7 - 99.4)であったのに対し、マッチさせた対照コホートでは73.6%(95%CI 63.2 - 81.4)であった(ハザード比0.1[95%CI 0.0 - 0.6]、ログランク検定、P=0.03)。CD24Fc用量漸増相または用量拡大相において用量制限毒性(DLT)は認められなかった。CD24Fcの複数回投与レジメンはDLTが認められず忍容性が高く、骨髄破壊的前処置を用いたMUD HSCT後におけて重症GVHDがなく生存率が高かった。
URL
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37647633/
コメント
GVHDの予防としてはT細胞の全体的な機能低下や量低下を図るのが一般的であるが、本論文では、今までとは別のアプローチを取っている。移植免疫ではアロ免疫だけでなく、移植の前処置で使われる細胞障害性の強い治療に伴って誘導されるダメージ関連分子パターン(DAMP)→免疫原性細胞死→APCの活性化→自己抗原に対するT細胞の活性化というカスケードがGVHDの悪化要因として知られていた。
Lectin-GはAPC上で発現しCD24と協調してDAMPsと結合し免疫誘導に対して抑制的に働くことが先行研究により明らかになっていたので、CD24FcによりCD24-Lectin-G経路を活性化させてGVHDを制御しようという試みである。今回は第2a相試験ということで小数例の検討となっているが、非常に期待の持てる結果となっている。今後の第3相試験に注目したい。
監訳・コメント:大阪大学大学院医学系研究科 癌ワクチン療法学寄附講座 招へい教授 坪井 昭博先生