難病Update

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Clock Drawing TestMontreal Cognitive AssessmentREM睡眠行動障害レビー小体型認知症軽度認知障害

2024.03.27

孤発性REM睡眠行動障害におけるMCI同定および認知症予測のためのMontreal Cognitive AssessmentとClock Drawing Test

Montreal Cognitive Assessment and the Clock Drawing Test to Identify MCI and Predict Dementia in Isolated REM Sleep Behavior Disorder

Émile Cogné*, Ronald B Postuma*, Marie-Joëlle Chasles*, Jessie De Roy*, Jacques Montplaisir*, Amélie Pelletier*, Isabelle Rouleau*, Jean-François Gagnon*

*From the Department of Psychology (É.C., M.-J.C., J.D.R., I.R., J.-F.G.), Université du Québec à Montréal; Centre for Advanced Research in Sleep Medicine (É.C., R.P., J.D.R., J.M., A.P., J.-F.G.), Hôpital du Sacré-Cœur de Montréal; Department of Neurology (R.P.), Montreal Neurological Institute; Centre de Recherche du CHUM (M.-J.C., I.R.), Montreal, and Department of Psychiatry (J.M.), Université de Montréal, Quebec, Canada.

Neurology. 2024 Feb 27;102(4):e208020. doi: 10.1212/WNL.0000000000208020. Epub 2024 Jan 25.

孤発性/特発性REM睡眠行動障害(iRBD)患者は、軽度認知障害(MCI)およびレビー小体型認知症(DLB)の発症リスクが高い。この研究の目的は、iRBDにおいて、MCI患者およびDLB発症リスクのある患者を識別するための2種類のスクリーニング検査の心理測定特性を明らかにすることであった。2006 - 21年に睡眠クリニックを受診し睡眠ポリグラフ検査で確認されたiRBD患者64例(MCIあり32例[平均年齢68.44歳、男性72%]、MCIなし32例[67.78歳、男性66%])を後ろ向きに選択し、対照者32例(69.84歳、男性47%)と併せて追跡した。参加者にMCI診断のための神経学的評価と神経心理学的評価、Montreal Cognitive Assessment(MoCA)とClock Drawing Test(CDT)も実施した。53例を追跡して(平均5.10±2.64年)、6例がDLBを発症し、16例がパーキンソン病を発症した。

DLB発症患者と対照者を最もよく識別できるカットオフ値が得られたのは、MoCAの合計スコア(30点中25点以下で感度100%[95%CI 61% - 100%]、特異度78%[61% - 89%]、AUC=0.888)および遅延再生(5点中3点以下で感度83%[44% - 97%]、特異度78%[61% - 89%]、AUC=0.875)であった。CDTについては、許容できる最適値は判明しなかった。

URL
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38271662/


コメント
iRBD患者さんをfollowする時、DLBやパーキンソン病の発症には常に気を使っている。今回、MoCA(検査の所要時間は、CDTの約3倍と言われている)がiRBD患者のDLB発症リスクのスクリーニングに有用であるというクラスIIのエビデンスが得られ、今後応用したいと思っている。一方、CDTについては、許容できる最適値は判明しなかった。私共臨床医にとって良くないこととはわかっていながら、一人の患者さんに現行システムでは、あまり時間をかけることはできない。そして、CDTは、短時間でできることもさることながら、記憶障害より視覚失認で発症する率が高いDLBには適している検査法と思っていたが、簡単には問屋が卸さない、ことのようである。MoCAの有用性を指摘したのみでなく、たっぷり患者さん診療に時間をかける、ゆとりある外来への戒めも含め、個人的には、「目から鱗が落ちる」的論文であり、取り上げた。

監訳・コメント:国立病院機構 大阪南医療センター 神経内科 狭間 敬憲先生

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