難病Update

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PROMISE-MGアザチオプリンミコフェノール酸モフェチル前向き研究デザイン重症筋無力症

2024.03.27

重症筋無力症に対するアザチオプリンとミコフェノール酸モフェチルの有効性の比較評価(PROMISE-MG):前向きコホート研究

Comparative effectiveness of azathioprine and mycophenolate mofetil for myasthenia gravis (PROMISE-MG): a prospective cohort study

Pushpa Narayanaswami*, Donald B Sanders, Laine Thomas, Dylan Thibault, Jason Blevins, Rishi Desai, Andrew Krueger, Kathie Bibeau, Bo Liu, Jeffrey T Guptill; PROMISE-MG Study Group

* Beth Israel Deaconess Medical Center, Harvard Medical School, Boston, MA, USA. Electronic address: pnarayan@bidmc.harvard.edu.

Lancet Neurol. 2024 Mar;23(3):267-276. doi: 10.1016/S1474-4422(24)00028-0.

重症筋無力症は神経筋接合部が侵される自己免疫疾患であり、その治療薬として経口コリンエステラーゼ阻害薬、および免疫抑制薬、免疫調節薬が用いられている。免疫抑制薬としては、コルチコステロイド以外としてアザチオプリンとミコフェノール酸モフェチルが多く用いられている。本研究は、後者の2剤の有効性を比較評価するために行ったものである。対象患者は、カナダと米国の大学病院19施設による自己免疫性重症筋無力症の多施設コホート集団(PROMISE-MG)における免疫抑制薬の投与を受けたことのない18歳以上の患者とした。2018年5月1日 - 2020年8月31日の間に登録された167例の中で、アザチオプリンまたはミコフェノール酸モフェチルの投与を受けなかった患者85例および治療開始時の転帰評価項目がスコア0の4例を除外した78例を解析対象とした。アザチオプリン(追跡期間中央値20ヵ月[四分位範囲(IQR)13 - 30])の投与者は31例、ミコフェノール酸モフェチル(追跡期間中央値25ヵ月[IQR 13.5 - 31.5])の投与者は47例であった。MG-QOL15rの平均変化量は、アザチオプリン投与患者で-6.8(95%CI:-17.2 - 3.6)、ミコフェノール酸モフェチル投与患者で-10.4(95%CI:-18.9 - -1.3)で、平均差は-3.3(95%CI:-7.7 - 1.2、P=0.15)であった。

患者の使用薬、用量、追跡調査間隔、薬物モニタリングは治療担当医師が決定した。追跡期間中において来院時に転帰評価項目と有害事象を評価した。評価は2つの評価項目を用いて行った。一つ目は患者報告に基づくMyasthenia Gravis-Quality of Life 15-revised(MGQOL-15r)のスコアで、治療開始時の平均変化量で評価を行った。MGQOL-15rスコア5点減少を臨床的に重要な減少(CMR)と評価した。二つ目は複合臨床転帰であった。疾患改善(Myasthenia Gravis Foundation of America Post-Intervention Status[MGFA-PIS]の軽微症状[MM]以上)および有害事象の負担の低さ(有害事象共通用語規準グレード1以下の有害事象)によって評価した。転帰は、アザチオプリン(2 mg/kg以上/日で12ヵ月以上)またはミコフェノール酸モフェチル(2 g以上/日で8ヵ月以上)の十分な用量の投与と期間治療を受けた患者と、そうでない患者に分けて一般化線形回帰モデルを用いて評価した。アザチオプリン投与患者では31例中18例(57%)ミコフェノール酸モフェチル投与患者では47例中38例(81%)にMG-QOL15r評価でCMRを達成していた(リスク差24.0%、95%CI:-0.2 - 48.0、P=0.052)。十分な用量の投与と期間治療を受けた患者群とその他の患者群のMG-QOL15rにおいてCMRを達成した患者の割合に統計的有意差は認められなかった。臨床複合転帰は、アザチオプリン投与患者31例中9例(28.1%)、ミコフェノール酸モフェチル投与患者47例中22例(47.7%)であった(リスク差19.6%、95%CI:-4.9 - 44.2、P=0·12)。有害事象は、アザチオプリン投与患者34例中11例(32%)およびミコフェノール酸モフェチル投与患者48例中9例(19%)で報告された。最も多かった有害事象は、アザチオプリン投与患者では肝毒性(34例中5例[15%])、ミコフェノール酸モフェチル投与患者では胃腸障害(48例中7例[15%])であった。両薬剤投与による関連死亡はなかった。

アザチオプリンおよびミコフェノール酸モフェチルの投与患者の半数以上が、QOLの改善があったとの報告をしており、臨床転帰についても両剤間で差が認められなかった。ミコフェノール酸モフェチルには催奇形性があると報告されているが、アザチオプリンの方が有害事象の発生が高い可能性があった。アザチオプリンは推奨より少ない用量でも効果が得られる可能性が示唆され、用量を減少投与により有害事象が少なくできる可能性がある。

URL
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38365379/

コメント
日常臨床診療における重症筋無力症患者の前向きコホートにおいてアザチオプリンとミコフェノール酸モフェチルの有効性を厳密に比較評価した研究はまだ少ない。本研究は、前向き研究デザインで、日常臨床診療の場で両薬剤の有効性と副作用を長期の追跡調査により分析評価したものであった。その結果、アザチオプリンとミコフェノール酸モフェチルはどちらも、生活の質、機能、筋力の改善に効果があることが示された。アザチオプリンに関連する有害事象は、ミコフェノール酸モフェチルに関連する有害事象より重篤の可能性があった。しかし、アザチオプリンは1日あたり2 mg/kg未満の用量でも効果がある可能性が示唆され、低用量使用により副作用が低減できる可能性があることから、その点を含めてさらなる比較評価が必要である。

監訳・コメント:関西大学大学院社会安全学研究科公衆衛生学 特別契約教授 高鳥毛敏雄先生

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