難病Update

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ThAZEB2加齢自己免疫疾患

2024.03.27

B細胞促進機能を有する加齢関連CD陽性細胞は、自己免疫においてZEB2により調節される

Age-associated CD4+ T cells with B cell-promoting functions are regulated by ZEB2 in autoimmunity

Manaka Goto*, Hideyuki Takahashi*, Ryochi Yoshida*, Takahiro Itamiya*, Masahiro Nakano*, Yasuo Nagafuchi*, Hiroaki Harada*, Toshiaki Shimizu*, Meiko Maeda, Akatsuki Kubota, Tatsushi Toda, Hiroaki Hatano*, Yusuke Sugimori*, Kimito Kawahata, Kazuhiko Yamamoto, Hirofumi Shoda*, Kazuyoshi Ishigaki, Mineto Ota, Tomohisa Okamura*, Keishi Fujio*

* Department of Allergy and Rheumatology, Graduate School of Medicine, The University of Tokyo, Tokyo, Japan.

Sci Immunol. 2024 Feb 8:eadk1643. doi: 10.1126/sciimmunol.adk1643.

自己免疫疾患は自己免疫寛容の破綻により引き起こされる。加齢は自己免疫における重要な危険因子であり、多くの自己免疫疾患は成人期に発症する傾向がある。本研究では、自己免疫疾患(関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、特発性炎症性筋疾患)患者および健康対照者354例から採取した末梢血単核細胞中のCD4陽性T細胞サブセットについて、フローサイトメトリーとバルクRNAシークエンシングを用いて詳細な解析を行った。その結果、加齢とともに増加する、CXCR3mid免疫表現型を有するCD4陽性エフェクターメモリーT細胞サブセットを同定し、これを「加齢関連ヘルパーT(ThA)細胞」と名付けた。遺伝子発現の解析から、ThA細胞は細胞毒性表現型とB細胞ヘルパー機能を併せもつことが示された。ThA細胞のT細胞受容体レパートリーには顕著な多様性低下がみられ、ThA細胞では遺伝子ZEB2およびTBX21の発現が高いことが示された。ZEB2の発現上昇はTBX21の発現上昇の維持に必要であり、ThA細胞の機能は転写因子ZEB2により調節されていることが示唆された。また、全身性エリテマトーデス患者から採取したThA細胞における遺伝子発現は疾患活動性を反映しており、カルシニューリン阻害薬の投与により影響を受けた。さらに、シングルセルRNAシークエンシングのデータを解析したところ、ThA細胞は自己免疫疾患患者の障害された臓器に浸潤していることが示された。これらの結果を合わせると、本研究により明らかにされたThA細胞の特性から、加齢と自己免疫疾患の関係における免疫系の関与についての理解が深まる可能性がある。

URL
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38330141/

コメント
自己免疫疾患の発症メカニズムについては未だに十分に明らかになっていない。本研究では自己免疫疾患の患者と健常人のCD4陽性T細胞を比較することでCXCR3mid陽性CD4陽性エフェクターメモリーT細胞サブセットが自己免疫患者で増加していることを明らかにし、加齢に伴い増加するサブセットということで加齢関連ヘルパーT細胞(ThA)と名付けている。新しく同定したというサブセットが今後広く認知されていくのか興味深い。また自己免疫疾患は成人発症が多いがThAの研究によりメカニズムが明らかになり、ひいては新たな治療標的がみつかればと思う。

監訳・コメント:大阪大学大学院医学系研究科 癌ワクチン療法学寄附講座 招へい教授 坪井 昭博先生

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