難病Update

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CD33T細胞レセプター様抗体WT1急性骨髄性白血病養子免疫T細胞療法

2024.04.26

2個の受容体、つまり抗体–T細胞受容体(Ab-TCR)および共刺激受容体を持つT細胞プラットフォームは、急性骨髄性白血病に対して特異性と効力を発揮する

A dual-receptor T-cell platform with Ab-TCR and costimulatory receptor achieves specificity and potency against AML

Tao Dao*, Guangyan Xiong, Sung Soo Mun*, Jeremy Meyerberg*, Tatyana Korontsvit*, Jingyi Xiang, Ziyou Cui, Aaron Y. Chang*, Casey Jarvis*, Winson Cai*, Hanzhi Luo*, Aspen Pierson*, Anthony Daniyan*, Sarah Yoo*, Sumiko Takao*, Michael Kharas*, Alex Kentsis*, Cheng Liu, and David A. Scheinberg*.

 

* Molecular Pharmacology Program, Memorial Sloan Kettering Cancer Center, New York, NY.

 

Blood. 2024 Feb 8;143(6):507-521. doi: 10.1182/blood.2023021054.

 

キメラ抗原受容体T細胞(CAR T)療法は、B細胞性悪性腫瘍において著明な臨床反応を誘起した。しかし、多くの課題があるため、他のがん種の治療におけるCAR T療法の使用は限られており、特に、固形腫瘍や、急性骨髄性白血病(AML)などB細胞性以外の血液悪性腫瘍において腫瘍選択的抗原が得られないことが問題となる。この問題については、重度の毒性という重大なリスクを伴わずに、十分に効率的な腫瘍抑制が得られる可能性がある。この問題を克服する一つのアプローチは、抗体–T細胞受容体(AbTCR)およびキメラ共刺激シグナル伝達受容体(CSR)を用いて2つの抗原を標的とする手法で、この場合、標的となる2つの受容体はがん細胞上に共存するが、正常な細胞上には共存しない。

 

本研究はAMLにおける概念実証(proof of concept)を探索する目的として、いずれもほとんどのAML細胞において高発現が認められるWilms tumor 1 タンパク(WT1)およびCD33を標的とする新規T細胞プラットフォームを作製した。独自のプラットフォームは、新規に開発したTCR様抗体であるESK2WT1由来RMFPNAPYLRMF]エピトープ/HLA-A2複合体に特異的なTCR様モノクローナル抗体)を構成成分とするAbTCRと抗CD33キメラCSR(共刺激分子CD28のシグナル伝達ドメインに結合した抗CD33一本鎖可変フラグメント)を用いたものである。そして、これは、AML細胞に対してT細胞による特異的な細胞毒性を発揮したが、一方では、正常なCD33陽性骨髄単球系細胞を含む健康な造血細胞には傷害を与えなかった。これらのデータから、以下のことが示唆された。つまり、今回の新規プラットフォームAbTCR-CSRは、AbTCR CARCSRの組み合わせによって、AMLにおける養子免疫T細胞療法の毒性を抑えながら特異性と臨床転帰を改善する可能性がある。

 

URL

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38048594/

コメント

WT1遺伝子は本論文で扱われている急性骨髄性白血病(AML)を含む種々の悪性腫瘍(造血器腫瘍、固形がん)に発現しており、その遺伝子産物であるWT1タンパクは癌免疫療法の標的となり得ることが一連の研究により示されている。WT1タンパクは細胞内に存在するが、それはWT1ペプチドに断片化されてHLA class I 分子とともに細胞表面に提示され、細胞表面のその『WT1ペプチド+HLA class I 分子』複合体CD8陽性Tリンパ球(つまりキラーT細胞)が認識してがん細胞を殺傷する。本論文の著者らは、以前、『WT1ペプチド(RMFPNAPYL)+HLA class I 分子(HLA-A2)』複合体を認識できるT細胞レセプター(TCR)様抗体であるESK1を作成した。本論文に登場するESK2も同様のモノクローナル抗体であり、より標的特異性が改善されたものである旨の記述がされている。

 

一方、CD33は骨髄系造血細胞やAMLの表面に発現しており、それに対する抗体は作成できる。

 

本論文においては、この『WT1ペプチド+HLA class I 分子』複合体とCD33という異なった2種類の標的を同時に認識できるT細胞をベースとしたAMLに対するがん免疫療法の開発の基礎研究が紹介されており、興味深い。

 

監訳・コメント:元 大阪大学大学院医学系研究科 癌幹細胞制御学寄附講座 寄附講座教授 岡芳弘先生

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