難病Update

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クラスター分類シェーグレン症候群リンパ腫自己免疫疾患

2024.04.26

患者の臨床症状及び生物学的所見をもとにしたシェーグレン病の患者のクラスター分類:横断的及び前向きの2つのコホートの患者データを用いた研究

Identification of distinct subgroups of Sjögren’s disease by cluster analysis based on clinical and biological manifestations: data from the cross-sectional Paris-Saclay and the prospective ASSESS cohorts

Yann Nguyen*, Gaëtane Nocturne*, Julien Henry, Wan-Fai Ng, Rakiba Belkhir, Frédéric Desmoulins, Elisabeth Bergé, Jacques Morel, Aleth Perdriger, Emmanuelle Dernis, Valérie Devauchelle-Pensec, Damien Sène, Philippe Dieudé, Marion Couderc, Anne-Laure Fauchais, Claire Larroche, Olivier Vittecoq, Carine Salliot, Eric Hachulla, Véronique Le Guern, Jacques-Eric Gottenberg, Xavier Mariette*, Raphaèle Seror

 

* Department of Rheumatology, Hôpital Bicêtre, Assistance Publique - Hôpitaux de Paris, Université Paris-Saclay, Paris, France; Center for Immunology of Viral Infections and Auto-immune Diseases (IMVA), Institut pour la Santé et la Recherche Médicale (INSERM) UMR 1184, Université Paris-Saclay, Paris, France.

 

Lancet Rheumatol. 2024 Apr;6(4):e216-e225. doi: 10.1016/S2665-9913(23)00340-5. Epub 2024 Mar 1.

 

シェーグレン病は多様な病態を呈する自己免疫疾患であり、その研究を進展させるためには患者を詳細に分類する必要がある。これまでの症状に基づく分類では不十分であったので、臨床医学・生物学的なパラメーターを入れて患者のサブグループを同定し、予後を検討した。

 

対象は、フランスにおける2つのコホートのシェーグレン病患者である。コホートの一つは横断的調査に基づくコホート(Paris-Saclay)である。二つ目は前向きコホート(Assessment of Systemic Signs and Evolution of Sjogren’s SyndromeASSESS)である。横断的コホートの患者の主観的な症状と臨床医学・生物学的所見の26変数をもとに分類し、その妥当性を前向きコホートで検証した。疾患活動性評価は、欧州リウマチ学会のシェーグレン症候群疾患活動性評価指標を用いた。患者報告症状評価は、同学会のシェーグレン症候群患者報告症状指標を用いた。患者群間の追跡調査期間中のリンパ腫発症率を比較した。

 

1999 - 2022年の横断コホートにおける対象患者は534例で、女性502例、男性32例であり、その年齢中央値は54歳であった。2006 - 2009年の前向きコホートの対象患者は395例で、女性370例、男性25例であり、年齢中央値は53歳であった。クラスター分析により患者を3つのサブグループに分けることができた。第Ⅰ群は「B細胞活性化を認めるが症状負担が低いグループ(BALS)」、第Ⅱ群は「全身疾患活動性が高いグループ(HAS)」、第Ⅲ群は「全身疾患活動性が低いが症状負担が高いグループ(LSAHS)」、であった。

 

前向きコホート追跡調査において期間中にⅠ群の患者に活動性指標および症状指標の悪化が認められた。患者報告症状指標低値の患者割合がスタート時の186例中92例から60ヵ月後に186例中67例に減少していた(P0.0001)。リンパ腫の発症は、Ⅰ群患者では186例中5例、Ⅱ群患者では158例中6例に認められた。横断的コホートでは、リンパ腫既往者の全例がⅠ群ないしⅡ群の者であった。本研究の患者分類とこれまでの患者分類との間には相関関係は認められなかった。患者の報告症状に加え臨床医学・生物学的な所見を入れた分類を行うことにより、患者の予後に異なるサブグループがあることが明らかになった。患者のサブグループにより、病態生理学的機序および疾患進展過程が異なる可能性が示唆された。疾病メカニズムや治療薬試験において本研究の患者の層別化分類が寄与するものと考えられる。

 

URL

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38437852/

 

コメント

シェーグレン病の患者を分類することにより病理学的作用機序の解明や治療研究を進展させることができる可能性がある。これまでの症状だけによる分類では予後との関連が見られなかったことから、本研究はフランスの2つのコホートを使い、症状に加え医学的・生物学的所見を入れたパラメーターをもとに患者分類を試みている。転帰から3群に分けることができることを示した。この群間で全身性および症候性の疾患の進展、さらにリンパ腫の発生リスクが異なることから、この疾患の病態生理学的メカニズム、疾患の進行過程の研究や治療薬の開発・試験に貢献できる可能性がある。

 

監訳・コメント:関西大学大学院社会安全学研究科公衆衛生学 特別契約教授 高鳥毛敏雄先生

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