難病Update

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CIDPコホート研究慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー

2024.06.04

日本の全国調査における慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチーの有病率、臨床プロファイルおよび予後

Prevalence, Clinical Profiles, and Prognosis of CIDP in Japanese Nationwide Survey

Yuya Aotsuka*, Sonoko Misawa*, Tomoki Suichi*, Kazumoto Shibuya*, Keigo Nakamura*, Hiroki Kano*, Ryo Otani*, Marie Morooka*, Moeko Ogushi*, Kengo Nagashima*, Yasunori Sato*, Nagato Kuriyama*, Satoshi Kuwabara*

*From the Department of Neurology (Y.A., S.M., T.S., K.S., K. Nakamura, H.K., R.O., M.M., M.O., S.K.), Graduate School of Medicine, Chiba University; School of Medicine (K. Nagashima, Y.S.), Keio University, Tokyo; and Shizuoka Graduate University of Public Health and Kyoto Prefectural University of Medicine (N.K.), Japan.

Neurology. 2024 Mar 26;102(6):e209130. doi: 10.1212/WNL.0000000000209130. Epub 2024 Feb 26.

 

慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー(CIDP)の現在の疫学、臨床プロファイル、治療を日本の全国調査を用いて検討する。2021年に確立された疫学的手法を用いて、全国調査を行った。日本全国の病院の脳神経内科および小児科に質問票を送付した。一次調査で患者数と有病率を明らかにし、二次調査で詳細な臨床情報を収集した。

一次調査で、CIDPの患者数は4,180人、有病率は100,000人当たり3.3人と推定された。二次調査で、患者1,257例の詳細な臨床データが得られた。男女比は1.5:1、発症年齢の中央値は52歳であった。最も頻度が高かった亜型は典型的CIDP(52%)であり、次いで遠位型CIDP(17%)と多巣性CIDP(17%)であった。初回治療は、免疫グロブリン療法(72%)、コルチコステロイド(15%)、その他(13%)であった。CIDP患者の78%は進行性/再発性の経過をたどり、14%は第一選択の治療に反応せず、18%は最終来院で自立歩行ができなかった。サブグループ解析では、ロジスティック回帰分析により、発症年齢が若いこと、筋萎縮がないこと、感覚神経の反応が正中神経異常 - 腓腹神経正常であることが、自立歩行できる可能性が高いことと関連していることが示された。

URL
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38408295/

コメント

本研究は、日本におけるCIDPの最新の疫学および臨床の現状を示す、世界的にみてもCIDPに関する最大規模のコホート研究である。臨床的亜型によって治療に対する反応や治療の転帰が異なるとみられるため、CIDPの予後を改善するには各亜型の病態生理に応じた適切な治療戦略が必要であることが分かった。今後の治療法開発への指標になる報告であり、取り上げた。

監訳・コメント:国立病院機構 大阪南医療センター 神経内科 狭間 敬憲先生

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