難病Update

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AutoimmuneFibroinflammatory diseaseG4-related diseaseIgG4関連疾患線維炎症性疾患自己免疫疾患

2024.06.26

IgG4関連疾患の臨床表現型の予測因子及び免疫応答の決定因子としての性差の違いの検討:米国リウマチ学会‐欧州リウマチ学会分類基準患者を対象とした後ろ向き研究による

Sex as a predictor of clinical phenotype and determinant of immune response in IgG4-related disease: a retrospective study of patients fulfilling the American College of Rheumatology–European League Against Rheumatism classification criteria

Isha Jha*, Grace A McMahon*, Cory A Perugino, Guy Katz, Zachary S Wallace, Ana Fernandes*, Bohang Jiang, Yuqing Zhang*, Aubree E McMahon*, Thomas V Guy, Hang Liu, Yasmin G Hernandez-Barco, Shiv Pillai, John H Stone

 

* Division of Rheumatology, Allergy, and Immunology, Massachusetts General Hospital, Boston, MA, USA.

 

Lancet Rheumatol. 2024 Jul;6(7):e460-e468. doi: 10.1016/S2665-9913(24)00089-4. Epub 2024 May 30.

 

IgG4関連疾患は、多臓器の線維炎症性自己免疫疾患と考えられている。これまでの研究から性差により表現型の違いがあることが示されている。本研究は、単一施設における後ろ向きコホートによりIgG4関連疾患の患者の性差による病態と症状の違いを検討することを目的として行った。対象は米国のボストンにあるMassachusetts General Hospital Rheumatology Clinicの登録患者である。米国リウマチ学会‐欧州リウマチ学会(ACR-EULAR)分類基準を満たした者を分析対象とし、診断時年齢、ベースライン時の臓器病変、治療状況、および治療前の臨床検査値の情報を収集した。血中の形質芽球およびB細胞サブセットはフローサイトメトリーで定量した。IgG4-related disease Responder Indexスコア0以上でベースライン時に未治療のIgG4関連疾患の活動性患者とした。

 

20081 - 20235月間の登録患者564例の中でACR-EULAR分類基準を満たした328例を分析対象とした。男性226例(69%)、女性102例(31%)で、男性の方が多かった(男女比2.21)。米国のリウマチクリニックの一般患者(男女比0.41)と性差が異なっていた(p0.001)。男性患者の割合は40歳代以降では年齢10歳上がる毎にさらに高くなっていた。男性患者の診断時平均年齢は、女性患者より約5.5歳高かった(63.7歳 対 58.2歳、p0.0031)。男性患者のベースライン時ACR-EULAR分類基準スコアは女性患者より高かった(中央値:男性35.0IQR28.0 - 46.0)、女性29.5IQR 25.0 - 39.0)、P0.0010)。

 

男性患者は、膵臓及び腎臓に病変を認めた割合が女性患者の約2倍であった(膵臓病変:男性患者では約50%、女性患者では約26%であり、P0.0001)。男性患者のベースライン時の血清学的異常患者の割合は、女性患者より高かった。男性患者のIgG4値の分布は女性患者より有意に高かった。男性患者では、血中B細胞応答が高い患者が多かった。IgG4関連疾患は男性の割合が高く、臓器症状およびB細胞応答に性差が顕著に認められるという点で、他の自己免疫疾患とは異なっていた。

 

本研究は、アメリカ国立研究所(NIH)、アメリカ国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)、Rheumatology Research Foundation、およびNational Institute of Arthritis and Musculoskeletal and Skin DiseasesNIAMS)から資金援助を受けて行った。

 

URL

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38824935/

 

コメント

IgG4関連疾患の患者は男性に多いことがこれまでの研究レビューで明らかにされている。また、男性患者に膵臓、腎臓、後腹膜、髄膜、大血管、冠動脈などの臓器症状を呈する患者が多いと報告されている。本研究でも性差があることが確認された。多くの自己免疫疾患では女性の割合が高いが、IgG4関連疾患患者では男性の割合が高い。IgG4関連疾患の診断では性差があることを念頭に置く必要がある。IgG4関連疾患がなぜ男性の割合が高いのか、病態や症状になぜ性差があるのか、疾患のメカニズムの解明につながる可能性があり、さらに調査研究を行うことが必要である。

 

監訳・コメント:関西大学・社会安全学研究科・公衆衛生学・特別契約教授 高鳥毛敏雄先生

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