2024.07.30
米国の2007 - 2021年の自己免疫性リウマチ性疾患の新規登録患者における疼痛管理方法の年次推移の検討:医療保険請求データを用いた研究
Annual trends in pain management modalities in patients with newly diagnosed autoimmune rheumatic diseases in the USA from 2007 to 2021: an administrative claims-based study
Titilola Falasinnu*, Di Lu, Matthew C Baker
* Division of Immunology and Rheumatology, Department of Medicine, Stanford University, School of Medicine, Stanford, CA, USA; Department of Anesthesiology, Perioperative, and Pain Medicine, Stanford University, School of Medicine, Stanford, CA, USA. Electronic address: tof@stanford.edu.
Lancet Rheumatol. 2024 Jun 27:S2665-9913(24)00120-6. doi: 10.1016/S2665-9913(24)00120-6. Epub 2024 Jun 27.
自己免疫性リウマチ性疾患患者の疼痛管理がとても重要な課題であるとなっていることから、その管理方法の年次的推移を検討した。分析患者は、2007 - 2021年の期間にMerative Marketscan Research Databaseに登録されていた強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、関節リウマチ、シェーグレン症候群、全身性硬化症、または全身性エリテマトーデス(SLE)の自己免疫疾患の新規登録患者である。同データベースは米国の入院・外来の患者の診療情報、雇用支援型の(employment-sponsored)医療保険請求データが匿名化されて登録されている。複数の疾患重複者は少数であった。疾患重複者の病名は最初の登録診断名を用いた。診断後、疼痛管理方法として用いられたオピオイド、抗けいれん薬、抗うつ薬、骨格筋弛緩薬、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、局所麻酔薬、および理学療法の年間発生率についてはロジスティック回帰分析を用いて年齢、性別、地域を補正して算出した。
患者数は計141,962人で、性別では女性107,475人(75.7%)、男性34,487人(24.3%)、疾患別では強直性脊椎炎患者10,927人、乾癬性関節炎患者21,438人、関節リウマチ患者71,393人、シェーグレン症候群患者16,718人、SLE患者18,018人、および全身性硬化症患者3,468人であった。全患者ではオピオイド使用者は2014年まで年間4%増加していたが(補正オッズ比1.04、95%CI:1.03 - 1.04)、2014年以降は年間15%減少していた(0.85、0.84 - 0.86)。理学療法の利用者は2014年までは年間5%増加していたが(1.05、1.04 - 1.06)、2014年以降は年間1%と僅かに減少していた(0.99、0.98 - 1.00)。抗けいれん薬使用者は2014年までは年間7%増加していたが(1.07、1.07 - 1.08)、2014年以降には有意な増減は認められなかった(1.00、0.99 - 1.00)。NSAID使用者は2014年以前には年間2%増加していたが(1.02、1.02 - 1.03)、2014年以降は年間5%減少していた(0.95、0.95 - 0.96)。性差についてはNSAID使用の2014以前(P=0.02)および局所麻酔薬使用の2014年以降(P=0.0100)以外には認められなかった。つまり、疼痛管理方法は、2014以降にオピオイド及びNSAIDの使用は減少し、それ以外の方法については増加ないし横ばいであった。本研究は、米国NIH関節炎・筋骨格皮膚疾患研究所(NIAMS)から資金援助を受けた。
URL
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38945137
コメント
自己免疫リウマチ性疾患患者への疼痛管理に関する臨床ガイドラインは更新されていない。ガイドラインの作成には慢性オピオイド使用移行における理学療法、作業療法、抗けいれん薬、局所鎮痛薬、および心理社会的治療などの非オピオイド系疼痛管理法の使用の現状調査が必要である。最近自己免疫リウマチ性疾患患者の疼痛管理方法の現状分析をしたところ、2014年以降、オピオイドおよび非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)の使用は減少し、非オピオイド鎮痛法の使用は増加または横ばいであった。疼痛管理方法の分析には疼痛状態を分類し、非薬物療法や心理的サポートを含む個別的医療を含めて行うことも必要である。
また、疼痛管理方法が、患者の生活の質、障害、健康状態、および機能などのアウトカムにどう影響しているのかの評価研究も今後行う必要がある。
監訳・コメント:関西大学・社会安全学研究科・公衆衛生学・特別契約教授 高鳥毛敏雄先生