dysarthriaLee Silverman voice treatmentNHS speech and languageNHSスピーチ言語療法Parkinson’s diseasパーキンソン病リー・シルバーマン発声療法構音障害
2024.08.29
パーキンソン病患者におけるリー・シルバーマン発声発話療法、NHSスピーチ言語療法、構音障害コントロールの比較研究(PD COMM Study):英国における多施設共同による3群の同時並行の非盲検無作為化対照試験
Lee Silverman voice treatment versus NHS speech and language therapy versus control for dysarthria in people with Parkinson’s disease (PD COMM): pragmatic, UK based, multicentre, three arm, parallel group, unblinded, randomised controlled trial
Catherine M Sackley*, Caroline Rick, Marian C Brady, Rebecca Woolley, Christopher Burton, Smitaa Patel, Patricia Masterson-Algar, Avril Nicoll, Christina H Smith, Sue Jowett, Natalie Ives, Gillian Beaton, Sylvia Dickson, Ryan Ottridge, Helen Nankervis*, Carl E Clarke; PD COMM collaborative group
* School of Health Science, University of Nottingham, Queen’s Medical Centre, Nottingham, UK.
BMJ. 2024 Jul 10:386:e078341. doi: 10.1136/bmj-2023-078341.
本研究は、パーキンソン病患者の構音障害に対するリー・シルバーマン・ラウド発声発話療法(LSVT LOUD)の有効性評価を、英国の多施設共同研究(PD COMM Study)の患者を使い、その他の2群と非盲検無作為化対照試験により行った。構音障害を有したパーキンソン病患者総数は388例であった。発話・言語療法の実施は2016年9月26日 - 2020年3月16日の間に外来または在宅で行った。対象者を1:1:1の比で無作為に、(1)リー・シルバーマン・ラウド発声発話療法(LSVT LOUD)群130例、(2)NHSスピーチ言語療法(NHS SLT)群129例、(3)非発話・言語療法群129例、の3群に割り付けた。LSVT LOUD群では週1回50分間の対面または遠隔セッションを4週間計4回実施した。在宅治療は治療日に1日最長5 - 10分間、非治療日に1日2回15分間実施した。NHS SLTの治療の実施量は被験者のニーズに応じて各々の施設の治療者に委ねた。これまでの実績からNHS SLT群は、週1回平均1回のセッションを6 - 8週間受けていたと推測した。NHS SLTの実施は、LSVT LOUDプロトコールによる治療を除き、個々の施設のやり方で実施することを認めた。解析はintention to treatの原則に基づいて行った。評価は、自己申告による音声障害指数(Voice Handicap Index:VHI)の3か月時点の合計スコアを使った。LSVT LOUD群では非発話・言語療法群と比べて3か月時点のVHIスコアが有意に低かった(−8.0点、99%CI−13.3 - −2.6、P<0.001)。NHS SLT群と非発話・言語療法群の間には有意差は認められなかった(1.7点、99%CI −3.8 - 7.1、P=0.43)。LSVT LOUD群では、NHS SLT群と比べてもVHIスコアが有意に低かった(−9.6点、99%CI −14.9 - −4.4、P<0.001)。有害事象は、LSVT LOUD群では93件(主として声の緊張)、NHS SLT群では46件の報告があったが、非発生・言語療法群では報告がなかった。重篤な有害事象の報告はなかった。LSVT LOUDは、自覚的評価による声の問題を軽減する上で、NHS SLTおよび非発話・言語療法よりも効果的であった。NHS SLTの有効性は、非発話・言語療法と比べて差がなかった。
URL
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38986549/
コメント
パーキンソン病では約9割の者に音声・構音障害が出現するとされている。これはパーキンソン病の特徴である筋強剛や固縮、姿勢異常などにより、胸郭の運動範囲の制限に伴う肺活量の低下や呼気の圧力の低下が「声」の出しにくさによると考えられている。英国で一般的に利用されている言語療法としてNHSスピーチ言語療法(NHS SLT)と米国から入ってきたリー・シルバーマン・ラウド発声発話療法(LSVT LOUD)があるが、この両者について確かな有効性を示す研究が少なかった。そのためサンプルサイズを増やし、ランダム化試験により、両者の有効性を確かめたものであった。本研究で、LSVT LOUD がNHS SLT(英国の通常の療法)や治療なしと比べて構音障害の低減効果が大きいことが示された。このことからパーキンソン病患者の構音障害に対しては、LSVT LOUD療法を標準とする必要があると提言している。
監訳・コメント:関西大学・社会安全学研究科・公衆衛生学・特別契約教授 高鳥毛敏雄先生