2024.09.27
非定型パーキンソン症候群患者における脳脊髄液中αシヌクレインシード増幅アッセイ
CSF α-Synuclein Seed Amplification Assay in Patients With Atypical Parkinsonian Disorders
Chloe Anastassiadis*, Ivan Martinez-Valbuena*, Anna Vasilevskaya*, Simrika Thapa*, Mohsen Hadian*, Alonso Morales-Rivero*, Daniela Mora-Fisher*, Cristina Salvo*, Foad Taghdiri*, Christine Sato*, Danielle Moreno*, Cassandra J Anor*, Karen Misquitta*, Blas Couto*, David F Tang-Wai*, Anthony E Lang*, Susan H Fox*, Ekaterina Rogaeva*, Gabor G Kovacs*, Maria Carmela Tartaglia*
*From the Tanz Centre for Research in Neurodegenerative Diseases (C.A., I.M.-V., A.V., S.T., M.H., F.T., C. Sato, D.M., C.J.A., K.M., A.E.L., E.R., G.G.K., M.C.T.); Krembil Brain Institute (I.M.-V., A.M.-R., B.C., D.F.T.-W., A.E.L., S.H.F., G.G.K., M.C.T.); The Edmond J. Safra Program in Parkinson's Disease and Morton and Gloria Shulman Movement Disorders Clinic (I.M.-V., A.M.-R., B.C., A.E.L., S.H.F., G.G.K., M.C.T.); Rossy Progressive Supranuclear Palsy Centre (I.M.-V., A.M.-R., A.E.L., G.G.K., M.C.T.), University Health Network and the University of Toronto; and University Health Network Memory Clinic (D.M.-F., C. Salvo, D.F.T.-W.), Toronto, Ontario, Canada.
Neurology. 2024 Sep 24;103(6):e209818. doi: 10.1212/WNL.0000000000209818. Epub 2024 Aug 29.
大脳皮質基底核症候群(CBS)および進行性核上性麻痺(PSP)には疾患修飾薬が存在しない。シード増幅アッセイ(SAA)によって、αシヌクレイン(αSyn)共病理のような神経病理学的プロセスが検出できるようになり、将来の疾患修飾薬戦略の成功に影響を及ぼすものである。主要目的はCBSおよびPSPにおけるαSyn共病理の可能性を評価することとし、αSynのSAA(αSyn-SAA)を用いた脳脊髄液(CSF)からの検出によって評価した。
この横断的観察研究は、2012 - 21年に臨床的にCBSまたはPSPと診断された患者で腰椎穿刺を受けた患者を対象とした(カナダ、Toronto Western Hospital)。
CBS患者40例(女性患者19例、65.9±8.6歳)およびPSP患者28例(女性患者13例、72.5±8.7歳)のCSFを検査した。ほとんどが白人(n=50)またはアジア人(n=14)であった。CBS患者の35.9%、PSP患者の28.6%がαSyn-SAA陽性であった。αSyn-SAA陽性患者においてのみ発症年齢にAβ42濃度との正の関連がみられた。また、ロジスティック回帰分析で、REM睡眠行動障害がαSyn-SAA陽性と関連していることが示唆された(OR 60.2、95%CI 5.2 - 1,965.8、P<0.01)。
URL
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39208367/
コメント
パーキンソン症候群のバイオマーカーアッセイ法の検証の論文で、α-シヌクレインのシード増幅アッセイ(SSA:seed amplification assay)法によってCBSとPSPの夫々鑑別を試みた。現在、臨床的なCBS、PSPの診断を確定するために広く許容されている唯一の手法は、患者の脳組織の病理解剖(剖検)による解析手法である。そのため、パーキンソン症候群の研究と患者の治療の両面において、有効なバイオマーカーの開発が強く望まれており、今回の論文はその一つである。
シード増幅アッセイ/シード増幅分析(SAA:seed amplification assay)」法と呼ばれるin vitroでタンパク質凝集体の形成速度を観察する手法が、脳脊髄液(CSF:cerebrospinal fluid)サンプルを対象としたα-シヌクレイン凝集体の検出にも応用されたものである。本研究で、CBSおよびPSPにおけるαSyn-SAA陽性の頻度が病理学的研究と一致して検出された。これは、著者らが指摘するように、他の方法では検出できない神経病理学的プロセスをin vivoで検出するためにαSyn-SAAが有用であることを強調するものである。また、ADの状況(特にAβ42低値)および発症年齢が高いことがαSyn-SAA陽性に関与している可能性があることが本研究の結果から示唆される。このことは、臨床試験における患者の層別化に新たな視点をもたらし、今後病態修飾医薬の開発に寄与する報告であり、取り上げた。
監訳・コメント:国立病院機構 大阪南医療センター 神経内科 狭間 敬憲先生