2024.09.27
γδ T細胞‐IL-3シグナル伝達軸は感覚ニューロンを介してアレルギー反応を調節する
A γδ T cell–IL-3 axis controls allergic responses through sensory neurons
Cameron H. Flayer*, Isabela J. Kernin*, Peri R. Matatia*, Xiangsunze Zeng, David A. Yarmolinsky, Cai Han*, Parth R. Naik*, Dean R. Buttaci*, Pamela A. Aderhold*, Ryan B. Camire, Xueping Zhu*, Alice J. Tirard*, John T. McGuire*, Neal P. Smith*, Clive S. McKimmie, Cameron S. McAlpine, Filip K. Swirski, Clifford J. Woolf, Alexandra-Chloe Villani*, Caroline L. Sokol
* Center for Immunology and Inflammatory Diseases, Massachusetts General Hospital, Harvard Medical School, Boston, MA, USA.
Nature. 2024 Sep 4. doi: 10.1038/s41586-024-07869-0. Online ahead of print.
感覚ニューロンは皮膚を支配し、アレルゲンはこれに直接作用することで、掻痒感と局所的な自然免疫細胞活性化の両方を引き起こし、これによりアレルギー性免疫応答が誘導される。慢性アレルギー性炎症の場合、免疫学的因子が感覚ニューロンをプライミングし、アレルギー性の掻痒感を引き起こす。こうした双方向性の神経免疫回路はアレルゲンへの反応を誘導するが、ニューロンのアレルゲンによる活性の閾値が免疫細胞によって調節されるのか否かについては不明であった。
本研究では、マウスおよびヒトの皮膚細胞を用いて実験を行い、アレルゲンに対する皮膚感覚ニューロンの反応が、γδ T細胞‐IL-3シグナル伝達軸によって調節されることを示した。
これまで特性付けられていなかったD3細胞と呼ばれる表皮γδ T細胞集団が、特徴的なサイトカインとしてインターロイキン(IL)-3を産生することでアレルギー性の掻痒を促進し、アレルギー性免疫応答を誘導することが明らかになった。IL-3は、Il3raを発現する感覚ニューロンに対してJAK2依存的に作用して、これらのニューロンのアレルゲンによる活性の閾値を低下させる。ただし、このこと自体が掻痒を引き起こすわけではない。次いで、このγδ T細胞‐IL-3シグナル伝達軸はSTAT5を介して作用して、神経ペプチドの産生を促進し、アレルギー性免疫応答を誘導する。
以上の結果は、アレルゲンへの最初の曝露に対する感覚ニューロンの反応を、その上流で調節する内因性の免疫スイッチが存在することを示している。この経路の存在は、アレルギー感受性の個人差を説明する可能性があり、アレルギー性疾患の治療に向けた新たな道を開くことになる。
URL
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39232162/
コメント
ストレス等で免疫疾患の悪化があることは広く知られており神経と免疫細胞との関係について近年知見が増えている。本論文では神経のアレルゲンによる活性の閾値が免疫細胞によって調節されるのか否かについて検討しており、アレルゲンに対する皮膚感覚ニューロンの反応はγδ T細胞‐IL-3シグナルによって調節されることを明らかにしている。IL-3Rを発現する神経細胞はIL-3の刺激を受けると2つのシグナル経路が動き出す。一つはJAK2経路で、もう一つはSTAT5経路である。JAK2経路はアレルギーに対する活性の閾値の低下に関与し、STAT5経路はアレルギー免疫応答を誘導することを明らかにしている。γδ T細胞‐IL-3シグナル経路のどこかの段階のブロックは抗原刺激で皮膚炎が悪化したり掻痒が増強するような疾患に対する治療法につながるかもしれない。
監訳・コメント:大阪大学大学院医学系研究科 癌ワクチン療法学寄附講座 招へい教授 坪井 昭博先生